国務省抜きでやれるのか
首脳会談「合意」の発表は、ホワイトハウスの車寄せで鄭氏ら韓国特使が行うという極めて異例の事態となった。その後、トランプ大統領はツイッターで会談の意義を強調。北朝鮮側は、国連大使がワシントン・ポスト紙へのEメールで「偉大な勇気ある最高指導者の決断」と意義を伝えた。不自然だったが、辛うじて両当事国は首脳会談開催の合意を明らかにした形だ。
他方、サンダース大統領報道官は翌9日の定例記者会見で非核化に向けて北朝鮮が「具体的で検証可能な行動」をとることを求め、北朝鮮が約束したことが「具体的に行動で示されるまでは、首脳会談は行われない」とクギを刺している。
大統領は自ら「即断」して、検証の問題などには全く言及しなかったが、ホワイトハウスは首脳会談に問題があることを示唆したのである。
さて、米朝首脳会談は本当に開催されるのか。トランプ大統領は、愚かな政策でも「実行する」点が過去の大統領とは違うことを売り物にしている。よほどのことがない限り、首脳会談を中止したりしないだろう。
しかし、実現までの曲折は必至。当面、CIA―韓国国家情報院―北朝鮮偵察総局というチャンネルを使って準備を進めるとみられる。しかし、情報機関は準備作業をやれても交渉はズブの素人であり、やはり国務省の経験と専門知識は必要となる。
トランプ大統領が首脳会談の成功を目指すのであれば、国務省スタッフを会談準備の段階から入れるべきだ。
大枠合意しか望めない
さらに、会談では何を目指すかを決める必要がある。あと2カ月しかない時間的制約から見て、望めるのは「大枠合意」しかない。
冷戦時代の戦略兵器制限交渉(SALT)や中距離核戦力(INF)削減条約など高官レベルの交渉で合意を積み上げた交渉と、ニクソン大統領の訪中のような交渉形式がある。後者は両論併記となった1972年の上海コミュニケでスタートし、国交正常化は1979年と7年もかかった。
今回は後者に近い形式とならざるを得ない。「朝鮮半島非核化」の大枠で合意し、核・ミサイル廃棄までの検証措置、その間の核・ミサイル実験停止と、制裁の継続ないしは段階的解除といったことになろう。
こうしたノウハウは、繰り返すが、国務省にしかないのだ。