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将来、がんや感染症を予防できるかもしれない

これをなんとかできないか、平均寿命に近づけられないかと考えるのが現代医学です。進化に逆らっているように映るかもしれませんが、私は、科学を使うようになったのも進化の結果だと考えています。

進化することで人間の脳が大きくなり、科学や技術を発展させられたのではないでしょうか。そのような知識も技術も手に入れてしまった以上、後戻りはできないのではないでしょうか。

例えば、21世紀の今、「傷口から細菌が入っても抗生物質を使わない」と言い張るのは現実的ではないはずです。

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ですから、人間は進化で得た科学の力を良い方向に使うべきでしょう。

人間は外敵に命を捕食されるような危険はなくなりました。ただ、まだ病気には打ち勝てません。がんやアルツハイマー病、多くの感染症。これらの病気とどう向き合うかは21世紀の大きな課題ですが、その解となりうる可能性を秘めているのがオートファジーなのです。そして、それは皆さんの日々の心がけで高められるのです。

死ぬ瞬間まで、健康で自分らしくいたいと思いませんか?

吉森 保(よしもり・たもつ)
生命科学者
専門は細胞生物学。医学博士。一般社団法人日本オートファジーコンソーシアム代表理事。大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。2017年大阪大学栄誉教授。2018~22年生命機能研究科研究科長。大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科博士課程中退、私大助手、ドイツ留学ののち、1996年オートファジー研究のパイオニア大隅良典氏(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに助教授として参加。2019年紫綬褒章受章、他受賞多数。著書に『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(日経BP)、『生命を守るしくみ オートファジー 老化、寿命、病気を左右する精巧なメカニズム』(講談社)他。