現在朝7時15分からBSプレミアムで再放送中の『まんぷく』(2018年)の鈴(松坂慶子)も、いつでも何でも駄々をこねて、娘の福子(安藤サクラ)に過干渉なキャラクターゆえ本放送当時はSNSで「毒母」と叩かれたが、再放送中の現在は観る方にも免疫がついたのか、はたまた松坂慶子のチャーミングな役作りが功を奏しているのか、「ちょっと面倒くさいゆるキャラ」のように愛されているのが興味深い。
また、『まんぷく』の鈴とは逆で、放送当時は「ちょっと個性的なお母さん」程度に受け入れられていたのに、再放送では「これは、まごうことなき毒母……」と視聴者をざわつかせた母親として、『マー姉ちゃん』(1979年)のはる(藤田弓子)や、『あぐり』(1997年)の美佐(松原智恵子)などがいる。
朝ドラの「名物お母ちゃん」
と、ここまでずいぶん“クセつよ”な母親ばかり並べてしまったので、最後にちゃんとした(「ちゃんとした」というのも変だが)「名物お母ちゃん」についても少しだけ触れておきたい。
明治から大正を生きる市井の人々の姿を瑞々しく描いた群像劇として出色の『はね駒』(1986年)。りん(斉藤由貴)の母・やえ(樹木希林)は、逞しく、慎ましくも一言一言に含蓄があり、まさに「朝ドラのおっ母さん」といった趣だ。
『てるてる家族』(2003年)の母・照子(浅野ゆう子)は名前のとおり、お日様のように底抜けの明るさとエネルギーで4姉妹の人生をカンカンに照らす、「5人目のヒロイン」だった。
ウザがられるほどに愛情いっぱいで、家族のためだけに生きている『ちりとてちん』(2007年)の糸子(和久井映見)は、娘の喜代美(貫地谷しほり)に物語序盤で「お母ちゃんみたいになりたくない」と反抗されるが、最後には「お母ちゃんみたいになりたい」と言わしめ、「愛の粘り勝ち」を果たした、ひたすら「愛の人」として記憶に残る。
朝ドラ109作あれば、109人の主人公とその母親がいて、ひとりとして同じような人物はいない。『虎に翼』(2024年)以降は、どのような「お母ちゃん」が登場するのだろうか。主人公の人格形成において重要人物である「母親」に注目して朝ドラを観てみるのも一興だ。