世帯年収1000万円の場合、いったい「いくらのマンション」を買うのが適切なのか? ギリギリの生活設計を迫られ、様変わりした中流上位層のリアルを徹底分析した、FPの加藤梨里氏の新刊『世帯年収1000万円:「勝ち組」家庭の残酷な真実』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

年収1000万世帯の買うべきマンションとは? ©getty

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高すぎて買えないマイホーム

 多くの人にとって、人生における一番大きな買い物はマイホームではないでしょうか。決して少なくない額をこの先数十年と支払い続けるわけですから、子どもの進学や老後の生活などの将来設計に大きく影響してきます。もちろん、賃貸派にとっても、家賃支払いは毎月の家計支出の主要な部分を占めるものです。

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 ローン支払いや家賃などの住居費は、額が大きいうえに毎月必ず一定額の支払いをしなければならないため、生活全体への影響は計り知れません。仮に月の手取りが同じ50万円だとすると、毎月出ていく住居費が10万円なのか20万円なのか、はたまたそれ以上なのかでは住居費以外にかけられるお金や貯蓄可能額に大きな差が出ます。

 衣食住の中でも、住まいは暮らしの基盤になるため、結婚や出産、子どもの進学、転勤や転職などでライフステージが変わると住居に対する考え方や選び方も変わります。

 特に、自分の学業や仕事が生活の中心となっている若いうちは「多少手狭で不便な環境でも家賃が安いなら妥協できる」と考えて住まいを選んでいた人でも、とりわけ結婚して子どもを持った場合には、「寝る場所さえあればいい」というわけにはいかないと思います。家族が安心して過ごせ、子どもを健やかに育てられる環境を、と考えるうちに、住まいに求める条件が複雑になってくるものです。

 大人だけの世帯にとっては快適なエリアでも、必ずしも子育てしやすい環境とは限りません。家族3人や4人、もしくはそれ以上でもゆとりのある広さで、近くに子どもが遊べる公園や大型スーパーがあって、何より治安がよく落ち着いた環境で……と、条件を挙げ始めるといくつも出てくるのではないでしょうか。幼稚園や学校への距離、小中学校の学区の評判、共働きなら保育園の入りやすさや夫婦の職場からの距離も気になるところです。

 また、終の住処と思って購入した家だとしても、何らかの事情で手放す必要に迫られる可能性を考慮すれば、万が一物件を売りに出した場合にどれぐらいの値が付くのかという点(リセールバリュー)も見過ごせません。条件を多く満たそうとすればするほど家探しが難しくなるとともに、費用も嵩かさみます。

 家族が増えたり子どもが大きくなったりすると、それまで住んでいた家が手狭に感じるようになりますし、幼稚園や小学校へ通うようになるとその地域に子どもの友人や習い事をはじめとした生活の拠点が形成されるため、「一か所に家を構えて落ち着きたい」と感じるようになる人も多いようです。