子育て世帯が、価格5000~6000万円程度のマイホームを手に入れるための実践的な方法を紹介。FPの加藤梨里氏の新刊『世帯年収1000万円:「勝ち組」家庭の残酷な真実』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

夢のマイホームを手に入れるための妥協点とは? ©getty

◆◆◆

 物件価格の許容範囲についてはさまざまな考え方がありますが、子どもの成長に伴って莫大な出費が予想される子育て世帯にとっては、住居費は抑えられるものなら抑えたい出費だと思います。では、価格5000~6000万円程度のマイホームを手に入れることは現実的に可能なのでしょうか。

ADVERTISEMENT

「超都心かつ広々とした新築もしくは築浅」といった、すべての理想を叶える完璧な物件は無理だとしても、いくつかの条件を妥協すれば希望に合う物件を見つけることはできるようです。探す際の主なポイントは(1)都心から離れる・駅から離れる、(2)築古にする、(3)広さを妥協する、の3点です。

(1)都心から離れる・駅から離れる

 細かな条件による違いはありますが、都内でも都心や駅から離れた立地なら、70m²以上の3LDKといったファミリー物件を5000~6000万円程度で見つけやすくなります。先述の榎本氏は「23区でも、山手線外の中野区、杉並区、大田区などでは、この予算で3LDKが買えることがあります」といいます。

 東京都下や神奈川県になると新築マンションでも平均価格が約5000万円台、新築戸建てでも平均5000~6000万円台となっています(2023年9月現在)。都心や駅から少し離れるだけで、家族3人や4人、またはそれ以上でも広いリビングでゆったりとくつろぐことができ、子どもにはそれぞれに個室を与えられ、収納も豊富で荷物の心配もないような、都心の狭小マンションでは叶わなかった快適な空間が、日常になるのです。

 職場が都心にある場合、職住近接は諦めることになりますが、郊外でも急行電車に乗れば都心まで1時間程度でアクセスできるエリアも多く、通勤は不可能ではありません。

 コロナ禍以降、子育て世帯の多い30~40代では東京から周辺の神奈川県、埼玉県、千葉県への転出が転入を上回り、都心離れの傾向が見られた時期もあります(総務省「住民基本台帳人口移動報告」)。筆者の周囲にも、経済的に手が届く快適なマイホームに住むために、この数年で東京から、さいたま市、町田市、つくば市、流山市、幕張市などへ引っ越した例がありました。

 しかし夫婦共働きの子育て世帯では、仕事との両立の面で現実的には難しいケースも少なくないはずです。夫婦ともに都心まで1時間かけて通勤するとなると、勤務時間がどのように設定されているかにもよりますが、仮に9時─17時を定時と考えると、子どもが未就学児なら朝8時前には保育園に送ってから会社に向かい、帰りは17時ぴったりに退勤して迎えに行っても通常の保育時間内に間に合うか、間に合わないかというところでしょう。フルタイム勤務で毎日必ず定時退勤というのは、仕組み上は可能な職場も増えてきていますが、業務が回るか、キャリア上の評価を維持できるかという面では正直なところ難しいと感じる人が多いのではないでしょうか。