しかし、日に40キロという量は、このやり方ではどう考えても無理である。白内障のホームレスはきっと、団地やマンションなどの警備員などと個人的に契約をしており、まとめて回収できるルートが複数あるのだろう。
「なんでそこまでして金が欲しいのか」
翌日、秋葉原に行くと駅前に大量の空き缶が並んでいる。緊急事態宣言下の今は、飲み屋が開いておらず、路上飲みが熱いのである。しかし、「これを全部拾っただけで800グラムにはなるんじゃないか」と嬉々としながら拾っているときにふと気が付いた。
ここで100個空き缶を拾うということはすなわち、路上飲みをしているような人、100人と濃厚接触していることになる。
自転車に乗りながらゴミ箱を漁り、ゴミ袋に空き缶を詰めるとなると、汗をかいてどうしても顔が痒くなり、無意識に手袋で掻いてしまう。
炊き出しを回ると決めれば飯には困らないこの状況で、果たしてそこまでして空き缶を拾う必要はあるのだろうか。
隅田公園にダンボールを敷きながら寝泊まりしているというホームレスが、自転車に空き缶を山積みにしていたので「どこに保管しているのか」と聞いてみた。彼は「どこにも保管できないから、夜中の間に拾って朝そのまま売りに行くんですよ」と言っていた。
炊き出しを前提に生きているようなホームレスにとっては、「なんでそこまでして金が欲しいのか」という印象でしかない。一般社会でも人によって必要なお金は大きく変わるように、ホームレスも人によってその額は大きく変わる。
もしくはそのホームレスが、「人の助けは借りずに自分の力で生きたい」というポリシーのもと、路上生活を送っているかだ。