炊き出しに参加すれば食べるに困らない状況にもかかわらず、「空き缶」拾いでお金を稼ぐホームレスの心理とは? 取材のため2021年7月23日~9月23日までの約2ヶ月間をホームレスとして過ごしたライターの國友公司氏の新刊『ルポ路上生活』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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空き缶拾いで生きる
9月8日。
これまでの疲労の蓄積もあってか、昨晩は貪るように眠りこけた。路上で熟睡できた試しがほとんどなく、常に寝不足の状態が続いていたのだ。
出入り口をメッシュにしていたので朝日で目覚めてしまったが、乾いた風が気持ち良すぎて11時まで二度寝をした。
自転車で炊き出しに行き、帰宅後はまた昼寝。結局この日は一日中テントの中で寝て過ごした。
以前、山谷で炊き出しを待っている間、リヤカーに空き缶を積んだホームレスに聞いた。
「こんなにすごい量どこで集めるんですか。これでいくらになるんですか?」
そのホームレスは白内障で片目を失明していたが、強靭な肉体で1日に40キロ以上の空き缶を集めると言った。アルミの価格が1キロ180円なので、日に7000円超だ。さすがに毎日は無理だというが、多いときで週に6回は稼働するそうだ。
「今はこんなにアルミの値段が上がっているんだから、やらない選択肢はないだろ。ただ、缶を拾うときはマンションの敷地には入らないようにな。この前仲間がそれで捕まって留置所に10日間入ったんだから」
調べてみると、墨田区で空き缶拾いをすると条例違反で捕まる可能性がある。しかし、台東区では今のところ取り締まる条例がないようだ。荒川河川敷でホームレスが言っていたように、この場所なら24時間テントを張っていても何も言われない。そうなれば、私も空き缶拾いをやってみるほかない。
コーナンで手袋を買い、ゴミ袋はその辺で拾った。まずは山谷に向かい、道路沿いに設置されている自動販売機のゴミ箱をひとつひとつ開けていく。ドヤ街というだけあり、このエリアは競合が多いのではと思っていたが、ゴミ箱の空き缶はほとんど残ったままだった。
おまけにドヤ街の住人たちが缶ビールや缶チューハイを飲みまくるものだから、缶の仕分けも楽だった。
アルミ缶は売れるがスチール缶は売れないのである。逆に、オフィス街では缶コーヒーやペットボトルが多く、仕分けが大変だった。仕分けが大変ということはすなわち、アルミ缶の比率が低いということだ。
そして、空き缶拾いを続けるうちに気付いたことが二つある。