「チームの勝敗に一喜一憂しない」と、頭の中で決めてはいても、やはり応援するチームが勝てば嬉しい。まして、開幕3連勝を飾ったとなれば、自然と心は上機嫌になるというもの。西武ファンにとっては、満開の桜とともに最高の気分で過ごす週末となったに違いない。
幸先良いスタートを切ったとなれば、時期尚早ながら、優勝への期待が高まるばかりだ。だが、「そんなに簡単なものではない」と、今カードの相手の名を見て、一気に現実に引き戻された。「福岡ソフトバンクホークス」。西武にとっては、2011年から大きく負け越しが続く宿敵中の宿敵だ。この王者への苦手意識を払拭しない限り、優勝は近づいてこないと言っても過言ではないだろう。「勝って兜の緒を締めよ」である。キャンプ時から選手たちの「打倒・ソフトバンク」の意識もかなり強いだけに、開幕3連勝という最高のスタートを弾みに、今年こそ、何としても勝ち越しを果たしたい。
15年ぶりに西武に帰ってきた松井稼頭央選手、日本球界最高左腕・菊池雄星投手、昨季首位打者・秋山翔吾選手のさらなる進化、山川穂高選手の4番打者定着への挑戦、源田壮亮選手、金子侑司選手、外崎修汰選手の盗塁王挑戦、森友哉選手の"捕手"としての台頭など、今季の西武は見どころ満載だが、優勝のためのキーパーソンとして、個人的には平井克典投手の名を挙げたい。
「8回のマウンド」への挑戦
社会人出身ルーキーとして即戦力の活躍が期待された昨季は、5月末に一軍デビュー。以後、シーズン終了まで一軍に帯同し、42試合2勝0敗、防御率2.40と、結果で応えた。今季は初の開幕一軍入りも果たし、首脳陣からもさらなる飛躍が期待されている。
2年目の今年を、平井投手本人は「挑戦する一年」と位置付ける。「絶対に、去年よりも試合の“肝”となるところで投げたい」が、最大の目標だ。昨季は、試合を重ねるごとに首脳陣からの信頼も勝ち取り、終盤には勝敗を左右する拮抗した状況での起用も増えたが、正式な“勝利の方程式”の一角に割って入ることはできなかった。チームがリードした中で7回、8回、9回に決まったようにマウンドへ向かう牧田和久投手、シュリッター投手、増田達至投手の姿を見ているうちに、「自分も、あの中の1人になりたい」と、より高い向上心を抱くようになったという。そして、今季はその牧田投手、シュリッター投手の2人がチームを去った。「自分がやらなければ」という自覚も増し、「セットアッパーに挑戦したい気持ちは強いです」。当然、8回のマウンドを狙っている。
そのためにも、勝ちパターンの投手には欠かせぬ「絶対に抑えてくれる」という全幅の信頼を得るべく、自主トレ、キャンプと、自らを徹底的に追い込んできた。一番のテーマは「直球」に置いた。
「去年の僕は、まっすぐが心配になると、すぐにスライダーに頼ってしまっていました。でも、今年はそれを抜け出したい。とにかく、まずはまっすぐ。『まっすぐあっての変化球』という姿勢をぶれさせないように、ストレートを磨いてきました。僕自身、スピードも、綺麗なまっすぐも求めていません。ストライクの取り方は1つではなく、見逃しや、空振り、ファウルでも、同じストライク。どんな形でも、自分を優位に持っていけるようにしたい」。