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左打者対策に「何度も諦めてきた球種」を

 さらに、もう1つ課題としているのが、左打者をいかに抑えるかだ。昨季の被打率を見ても、右打者が.216だったのに対し、左は.297と、明らかに苦戦した。対策の1つとして、新たにチェンジアップ、カットボールの2つの球種習得に取り組んだ。チェンジアップについて、実は「何度も挑戦して諦めてきた球種」と明かす。まだ、改善の余地もあると言うが、「コーチたちからも、一番必要なボールだと言われているので、今年だけは本当に諦めずにやっていく」と、もう1ランクアップするべく決意は固い。

 また、カットボールも、「もともと投げていたのですが、途中でスライダーと一緒にしちゃっていたんです。それを、今年、もう1回別の球に分けた感じ。だいぶ使えるようになってきました」と、手応えをつかみつつある。だが、昨季の経験からも「この世界では、中途半端に投げられても、意味がない。投げるのであれば、本当にしっかりとしたボールにしないと、キャッチャーにも使ってもらえないので」と、シビアさは重々承知の上。今後、信頼できる球になっていくのか、注目したい。

 去年は7、8回を投げる投手が固定されていたが、今年に関しては、高橋朋己投手、武隈祥太投手、新外国人ニール・ワグナー投手など、候補者が複数おり、開幕までは明確に固定されていなかった。だが、3月30日の開幕戦。11−2と大差リードの状況ではあったが、8回にエース・菊池雄星投手からマウンドを受け継いだのは背番号25だった。また、翌31日には、3点リードで迎えた8回に起用されたのは高橋朋投手だったが、四球、左中間へのタイムリー2塁打で1点を失ったところで、左肩の違和感のため降板。そこで急遽マウンドを託されたのが平井投手だった。アルシア選手にライト前に運ばれ、2塁走者を還したが、一打同点のピンチを打者4人、17球、1安打、2三振に抑え、試合を決定づける9回の4得点への流れを作り出した。さらに3試合目もセットアッパーを務め、3連勝に大貢献した。

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2年目右腕の安定が欠かせない理由

 セットアッパーの最有力候補と目されていた高橋朋投手が、残念ながら4月1日付で登録抹消となった現状からも、今後も、7回を武隈投手、8回平井投手、9回増田投手の勝利の方程式が有力と見る。ただ、昨季も牧田投手とシュリッター投手は、試合状況や調子の良し悪しによって、入れ替わったことも何度かあっただけに、7、8回は流動的である可能性も十分考えられる。土肥義弘投手コーチは、以前から「(仮に6回まで先発が投げたとして)先発投手が投げていた流れを、プチっと切ってくれることがある」と、7回を投げる投手の役割の大事さを語っている。その意味でも、7、8回を託される2年目右腕のシーズンを通した安定が、絶対に欠かせないのである。

「今年は、とにかく意思、目的を持って投げられています」と、充実の表情で開幕を迎えた平井投手。チーム10年ぶりの悲願達成の鍵は、この男が握っている気がしてならない。

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