皇室御用達のタイ料理店が存在
魚介類にも王室と皇室をつなぐエピソードがある。ティラピアはカワスズメという淡水魚の一種にあたる。生命力が強く、淡水・汽水(淡水と海水が混ざった場所)に生息し、なんでも食べる。繁殖力も高く、タイでは食用魚として一般的だ。タイ語ではこの魚を「プラー・ニン」と呼ぶ。中国人あるいはタイ華人が名づけた「仁魚」の読みをそのままタイ語にしたものだ。ニンはすなわち「仁」という字のことだ。これは、平成時代の天皇陛下、上皇明仁を指す。
ティラピアがタイで一般的になったのは、上皇明仁が皇太子時代、当時のタイ国王プミポン・アドゥンヤデート王(ラマ9世王)にティラピアを贈ったことがきっかけだ。上皇明仁が、タイの食糧事情があまりよくないことを知ってティラピアを50匹ほど贈っている。1965年3月25日のことだ。それからタイでティラピアが研究され、1年後には1万匹にまで繁殖させることに成功し、これらをタイ中の河川に放流した。
タイ王室と皇室にはこういった交流があり、今でも日本の皇室がしばしばタイを訪れる。皇室御用達のタイ料理店もバンコクにあるほどだ。
日本はタイ人の眼中からなくなりつつある
ティラピアのつながりなどもあってタイ人には親日家が多いと日本人は思っている。しかし、必ずしもそういうわけではない。日本に対していい印象を持っている人の方が多いように見えるとはいえ、それはタイ人のおべっかでもある。「微笑の国タイランド」はタイ人自身も思いこんでいる幻想で、「親日家のタイ人」もまた日本人が持つ幻想に過ぎない。嫌いではないという程度の「無害な外国人」くらいにしか思われていない。かつては日本の家電などへの憧れから、日本人はすごいから仲よくしておきたいという思惑はあったろう。しかし、結局それは下心があっての態度であって、真の友人になるには越えなければならない壁があった。タイ人はタイ人が一番偉いと思っているので、日本人に対して尊敬する気持ちは少なくとも一般の人にはない。あくまでもタイ人には反日感情がないだけだ。