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 さらにいえば、現実的には一部地域に反日感情がある。マレーシア国境付近はそれが顕著な気がする。こんな時代でも「日本人お断り」の宿泊施設があるにはあるのだ。むろん、これは太平洋戦争が理由だ。1937年に日中戦争が勃発した直後から中華系住民が多かったマレーシアでは抗日運動がはじまっていた。マレーシア北部にあるペナン島は戦時中日本の軍事的支配下に置かれていて、42年4月と9月には日本軍によって抗日運動家の疑いがある人々の粛清が行われたとされる。そのため、この地域には反日感情が今も少し残っている。ペナンから遠いというほど遠くないタイ国境近辺は、タイ国内側にも日本への反感が伝わっているようだ。あくまでもタイの反日感情はほんの一部だけれども。

タイ人が親日家に見えたワケ

 タイの人口は日本の半分程度だ。それでも日本よりもずっと多民族かつ多宗教で、結果として一枚岩ではない。タイ人は親日家、タイ人は微笑、と思うのは決めつけで、ときにタイ人を理解するうえで誤解してしまう危険性があることも知っておいた方がいい。

 日本でもそうだし、東南アジア全域がそうだが、今やエンターテインメントはもちろん、スイーツや女性向けスパなどでは韓国の技術が導入されている。2000年代初頭はなんでも「日本発」がもてはやされた。だからこそタイ人は親日家に見えたわけだが、もう時代は変わっている。あのころはテレビ番組で流れるアジア音楽といえば日本の歌謡曲が主流だった。しかし、いつの間にか韓国エンタメに負け、タイのテレビで日本の芸能人を見ることが少なくなった。

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韓国家電が総合的に日本製品を上まわる

 韓国のソフトパワーが強すぎて、タイ政府もそれをまねるかのようにタイのソフトパワーを活用しようと動き出しているくらい、今は韓国がタイで注目されるが、ボクが初めてタイに来た98年ごろにはすでに家電業界においてサムスンが注目されるようになっていた。車も同じで、ヒュンダイ(あるいはヒョンデ)はベトナムやラオスほどではないが、バンコクでも見かける。製品の金額だけに注目する傾向がある東南アジア人にとって、韓国メーカーは元来受け入れられやすかった。それに、近年の韓国製品は低価格や高いデザイン性だけでなく性能そのものや耐久性も高く、安かろう悪かろうの時代はおわっている。日本ブランドの品質が高いというイメージは今もタイ人の中にあるとはいえ、韓国家電が総合的に日本製品を上まわるといってもいい。日本が太刀打ちできる相手ではなくなりつつあるのだ。