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男子校へ出張してHPVウイルス感染リスクに警鐘鳴らす

そんな中島さんは今、大学での勉強以外の活動にも時間を費やしている。例えば、産婦人科に関わる先輩たちと連携することだ。

一人は男性医師で、産婦人科の診察のかたわら、病児保育のネット予約サービスを提供する会社を運営している。中島さんがその活動に賛同の意をメールで送るなどして交流が生まれ、現在はその会社でインターンをしている。

もう一人は徳島大学医学部6年生の男性。同じ産婦人科志望で、赤ちゃんの泣き声をAIによって分析するアプリの開発を主導している。泣き声の周波数や大きさなどにより、空腹、眠気、痛みなど「なぜ泣いているか」を推定するというもの。出産直後の母親のストレス軽減を目指す活動内容に中島さんは心打たれたという。

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「私には3人のロールモデルがいます。医療現場から飛び出して、子育てしやすい環境づくりを通してメンタルヘルスの向上に挑戦する2人の先輩。そして、医師としての高度なスキルを持ち、患者さんや医療従事者の皆さんからも慕われている父。3人のように私も医師として、社会の中の“生きづらさ”を改善できるような仕事に真摯(しんし)に向き合いたいです」

中島さん自身、子宮頸(けい)がんの予防啓発を行う学生団体「Vcan」を立ち上げ、代表を務めた。特に、子宮頸がんの原因とされる、HPV(ヒトパピローマウイルス)のワクチンについて当事者世代の多くが知らないことに問題意識を抱き、「予防手段を知らないまま、がんにならないでほしい」というメッセージを伝え続けている。

「子宮頸がんによって、日本では1年間で約1万1000人が診断を受け、約3000人が亡くなっています。こうした現実などをSNSで発信するほか、当事者世代である中高生に直接メッセージを届けるために全国の学校で出張授業をしています。男子校にも行きます。男性がHPVに感染すると咽頭がんや肛門がんなどを発症しますが、ワクチン接種することで感染の予防効果があるんです。リスクとベネフィットを両方知ったうえで、ワクチンを接種するかどうかを判断できる社会にできたらと考えています。予防する手段を知らないまま接種しないのと、知ったうえで接種しないのとでは、同じ“接種しない”でも異なりますよね。私たちは当事者がそうした自分の命と健康を守る情報を知る機会をきちんと与えられる世界の実現を目指したいです。その結果、接種率向上につながればと思います」