子宮頸がんによって日本では年間に約3000人が亡くなっている。滋賀医科大学医学部4年生・中島花音さんは子宮頸がんの原因とされる、HPV(ヒトパピローマウイルス)のワクチンについて当事者である若い世代の多くが知らないことに問題意識を抱き、「予防手段を知らないまま、がんにならないでほしい」とメッセージを伝え続けている――。

※本稿は、『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。

中島花音さん[出所=『医学部進学大百科2024完全保存版』(プレジデントムック)]

予防できるがんがあると同世代に伝えたい女子医大生

京都市立の名門・堀川高校から滋賀医科大学医学部に現役合格した中島花音さんだが、当初は医師になることにそれほど前向きではなかったという。その理由は、心臓外科医をしている父にあった。

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「せっかくの家族旅行、車で移動中に父に緊急電話がかかってきて、『悪いけど、あとは電車で行ってくれ』と、そのまま仕事に舞い戻ったこともありました。そこまで仕事に熱意がある父に尊敬の念を持つと同時に、私のキャパシティーでは私生活が二の次になってしまいそうで。同じ道を歩んだら自分の世界が狭くなってしまうとも思いました」(中島さん、以下同)

日常的に多忙だった父の様子を目にしていたため「医師」という選択肢はなかった中島さんだが、その価値観が変わったのは高2の頃。通っていた塾の70代ベテラン女性講師が自己免疫疾患のひとつ関節リウマチに罹患(りかん)し、体調を崩したことがきっかけだった。

「長い期間、指や膝などの痛みに苦しんでいらっしゃいましたが、医療の力で寛解したのです。それまで私は医療ができる最大のことは救急で病院に運ばれ生死の境にいる患者さんの命を救うことだと思っていました。でも、本当はもっとたくさんの領域があり、患者さんのQOL(生活の質)を高め、その人らしさや生きやすさを手助けすることも医療の大きな役割なのだと気づくことができたんです」

現在、医学部4年生となり、産婦人科医を志している。妊娠・出産、がん、ホルモン異常への対応など、女性が一生の中で出合うさまざまな問題や疾患に向き合う、本人いわく「まさに生死の境に立つ仕事」だ。父親の診療科とは異なるが、緊急呼び出しも少なくない激務である。