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あのとき、「子宮頸がんワクチン」を打たせてもらえなかった少女たちはいま

3月4日は「国際HPV啓発デー」

2021/03/04
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 新型コロナワクチン報道に注目が集まっているが、その陰ですでに有効なワクチンがありながら、日本でなかなか普及が進まないワクチンがある。

「#HPVワクチン打ちたいのは私だ」

 ツイッター上で、女子大学生たちによるつぶやきが広がっている。「子宮頸がんワクチン(正式名称・HPVワクチン)」の定期接種の機会を逃した、2000年度生まれ以降の女子大学生だ。子宮頸がん予防のために開発されたワクチンだが、2013年頃から過熱し出した副反応報道により親に打つことを止められ、無料で打てる期間に打てなかったかつての少女たち。大学生となった彼女たちが今、“大学生当事者”として声を挙げ始めた。

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©️iStock.com

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中学1年生だった頃、アンチHPVワクチン報道が過熱

 現在20歳のUさんは、HPVワクチンの副反応問題が大きく報道された当時をこう振り返る。

「テレビのニュースで副反応が問題になっていることは知っていて、やっぱり怖いよねという話を家族でしたのを覚えています。でもニュースで観たときだけ話題になるぐらいで、実際に打つ、打たないの話はしなかったと思います。当時は親も分からないことがたくさんあったと思うので」

 同じく現在20歳のTさんはこう語る。

「母はHPVワクチンを打たせるかどうかで悩んでいたようで、“自分でもニュースを観てみてね”と言われました。結局、母は打たせることには慎重で、私自身も“打ってはいけないワクチン”というイメージを持ちました。学校の教室でこの話題が上ることはほとんどありませんでした」

大学のサークルで知ったHPVワクチンの必要性

 UさんもTさんも、女子栄養大学で養護教諭を目指して活動するサークル、「たんぽぽ」に所属する大学2年生だ。「たんぽぽ」では、埼玉医科大学産婦人科助教の高橋幸子医師の指導のもと、中学生向けの性教育教材を制作するなどの活動を行っている。彼女たちは高橋医師からHPVワクチンに関する知識を得たことから大学生当事者として声を挙げ始めた。これがHPVワクチンの普及を図る医療者有志の会、「HPVワクチンfor Me」が立ち上がるきっかけにもなった。今、彼女たちが訴えるのは、定期接種を逃した世代への公費による無料のキャッチアップ接種の実現だ。

『安易な接種の推進やめよ』、『子宮頸がんワクチンは戦後最大の薬害事件』。センセーショナルな見出しが並び、アンチHPVワクチン報道が過熱していた当時、彼女たちは中学1年生。親の反対で定期接種のチャンスを逃し、未接種のまま今に至ってしまったのだ。