最終段階でKADOKAWAから製作中止を通告された
石井 終始、担当プロデューサーとは話がかみ合わなかったですね。でも彼らに主体性はないんです。自分の責任で「カットして欲しい」ということではない。ただ怒られたくないだけで、周りの顔色ばかり窺っている。作品への愛情や矜持なんてもちろんない。
角川 映画は総合芸術です。制作サイドが情熱を失ったら、いい映画は作れっこないですよ。
石井 最終的には昨年の11月中旬にKADOKAWAから製作中止を通告されました。編集も終わって、最後の音入れをする段階でしたね。お金もなく、お蔵入り危機になりましたが何とか完成だけはさせて、結局スターサンズが単独で配給することになりました。
そして年が明けて1月、映画製作者連盟(映連)の新年記者発表でKADOKAWAの夏野剛社長が、映画を「公開するもの、公開しないものを仕分けする」と発言しました。これについて角川さんはどう思われます?
角川 僕は角川春樹の後を継いで、映画事業を続けてきましたが、KADOKAWAという会社がある限り、映画を続けるのが原則ですよ。
映画というのは、プロデューサー、監督、脚本家、出演者……権利関係者が非常に多い作品なんです。日本では1970年に著作権法が出来ますが、ハリウッド方式で、映画会社がすべての権利を持つという法人著作権が認められている。その代わり、すべての責任を負わなければならない。だから映画を制作する会社には、責任を噛みしめて貰わないといけない。美味しいところだけ持っていこうなんていうのはダメなんです。
石井 俳優も僕たちスタッフも、今回は特に覚悟を持って映画を作っていました。にもかかわらず、完成直前に「仕分けします」と。映画にビジネスの側面があるのはもちろん承知していますが、僕たちの情熱まで仕分けされるのは、到底受け入れられるものではありませんでした。
角川 いや、本当に申し訳なかったね。
石井 こんなことが許されるなら、町場の映画製作プロダクションは全て倒産します。一部のメディアは問題視していますけど、まだまだ大きな問題にはなっていない。
角川 映画業界全体として受け止めないといけない問題だよね。
石井 角川さんが今回受賞した新藤兼人賞は日本映画製作者協会の賞です。協会の人たちは問題意識を持っていて、しっかりと主張しようというムードがあると、僕は感じています。