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「嘉吉の乱」前夜の播磨国の面白さ
――「嘉吉の乱」前夜の不穏な播磨国、という設定も、読みどころの一つです。播磨の守護・赤松満祐が室町幕府6代将軍・足利義教を殺害する、という衝撃的な事件ですが、これを取り上げようと思ったきっかけは何でしょう?
播磨国というのは面白い国で、蘆屋道満が生きていた時代から、折に触れて京の都と対立がある。道満には都の安倍晴明と対決したという伝説がありますし、その他にも、牛頭天王の総本宮は京都の八坂神社か播磨の廣峯神社か、ということでも対立しました。どちらも疫病を鎮める神・牛頭天王を祀っているので、鎌倉時代に、どちらが本当の総本宮か論争が起きたんです。それが何百年も決着しなかった。
廣峯神社を創建したのは陰陽道の祖ともいわれる吉備真備ですから、都側としてはあまり邪険にも出来ない。関東管領や東北の勢力も都とは対立しましたが、播磨国と都との関係性はちょっと独特ですね。
「嘉吉の乱」は、地方の大名が時の将軍を弑逆するという、本来なら首謀者の赤松家が当日その場で討伐されてもおかしくない事件ですが、将軍義教が悪将軍と呼ばれるほどの人だったので、都側もすぐには赤松家に追っ手をかけていません。なかなか兵を動かさず、ようやく播磨国に兵を送り込んですべてが決着するのは、将軍弑逆から約3ヶ月もたってからです。
まだまだ中央集権が完成されていない時代ならではの出来事ですね。播磨という国の立地とルーツ、それに時代性が加わって起きた事件の面白さがあります。
文藝春秋