ヒトの進化の歴史を見ると、大昔から「やりがい」や「生きがい」が寿命を延ばしてきたとも言える。ヒトは社会性の動物であり、協力して集団としての生き残りを達成してきた。個人としては、いかにその集団の中での役割を果たすかが重要となる。「喜んで協力できる人」が選択されて生き残ってきたのである。
集団生活がシニアを元気にする
ヒトが寿命を延ばすきっかけとなったのは、集団生活だと私は考えている。集団の維持には、「まとめ役」が必要であり、いいまとめ役がいる集団ほど結束力が強く生き残る可能性が高い。ここで活躍するのが年長者「シニア」である。
人類が狩猟・採集で生活していた時代から、狩りの仕方、採集場所や時期などの情報、他集団との闘い方、揉めごとの仲裁、子育ての方法、その他よろずお悩みごとの解決法について、全ては経験豊かなシニアの頭の中にあった。集団にとって「いいシニア」はなくてはならない存在となり、彼ら彼女らがいる集団が選択され生き残ってきたのだ。体力が衰え、狩りの先頭に立てなくなっても、自身で子供が産めなくてもシニアには集団の中での居場所、つまり仲間から必要とされる「生きがい」があったのだ。
集団が大きくなると、必然的に役割も細分化され、さらに内部の統率や教育が大切になってくる。ここでもまたシニアに対する需要が高まる。集団が大きく豊かになるとシニアを包容するキャパも増大し、ますますシニアは元気になり「寿命延長の正のスパイラル」に突入する。
利己的な若者、利他的なシニア
この構造は今も変わっていない。若者は今も昔も自身の欲望に正直に突き進む。これはパートナーの獲得や自立に必要な成長過程であり、自然なことである。このような若者の特性は集団の活性化やイノベーションに必須な要素でもある。一方でそんな「利己的な」若者だけでは社会はまとまらず、結局若者らしさを十分に発揮できなくなる。やはり利他的に集団を支えるシニアの存在は欠かせない。