「人類の3つの夢――ドラえもん、銀河鉄道999、パンドラの果実」

 科学者の夢(人類の夢と言ってもいいかもしれないが)を3つ挙げるとしよう。1つはより賢くなりたいという夢。そのために「究極の知性――AI」を作るわけだ。ただ最終的に目指しているのは、流行りのChatGPTのようなツールではなく、ドラえもんのような人間の仲間になれる汎用型AIである。

 2つ目の夢は「宇宙旅行」。地球外生命との遭遇など、好奇心を掻き立てる。ちなみに私は『銀河鉄道999』とカーク船長率いるエンタープライズ号の『宇宙大作戦』がお気に入り。エンタープライズ号の模型も持っていた。

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 そして3つ目の夢が今回お話しする「不老不死」。生物学的に不死は不可能なので(拙書『生物はなぜ死ぬのか』講談社現代新書を参照)、実際には不老長寿であろうか。ちなみに『パンドラの果実』は2022年に私が監修をお手伝いした日テレのドラマ。生物を不老不死にするウイルスが登場する。私の研究室では酵母菌の寿命を延長する遺伝子を発見しており、今後の発展が楽しみな分野である。

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ヒトの平均寿命が延びた原因

 最近100年間で日本人の平均寿命は2倍近く延びた。「平均寿命」には乳幼児の死亡率が大きく影響する。戦後、生活環境が改善され、食糧不足や感染症が減ったことが大きい。一方、いわゆる寿命である「成人後の寿命」も延びてきた。私が生まれた60年前は100歳以上の人が150人程度しかいなかったが、今や9万人に達している。高齢者の増加は栄養や医療に加え、多くの人が長生きしたいと思える社会になり、健康志向が強まったことも原因にある。

 興味深いことに、生物学的な寿命である「最長寿命」はあまり変わっていない。120歳を超えた人類はたった一人だけで、この記録は30年近く破られていない。それでもすごく長い目でみると、ヒトはゲノム(遺伝情報)が約99%同じであるチンパンジーの最長寿命の2倍長く生きられるので、進化の過程でかなり長寿な種となった。