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 シャンソンは毎月、四谷にある「蟻ん子」というライブハウスで歌って、三越劇場で年1回コンサートを開いていました。コロナ禍でしばらく中止していましたが、23年から再開しています。歌は慣れないし、緊張しますが、やるからには世間に出たいですよ。人からは笑われるかもしれないけど、歌手として認められたいと思っています。

 書アートは「書道」ではなく、ラインアートとしての「書」です。アートだから思い通りになりませんが、作品ができたときには「私のなかにこんな世界があったんだ」とビックリします。死ぬまでに自分のなかにあるものを洗いざらい出しきって、自分が驚くような世界に出会いたい。私は未知の自分に対して貪欲なのかもしれません。

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自分の人生を「わが・まま」に生きていく

 毎年1回、書アートの個展を開いて、今年で8回目になります。なかには気に入って買ってくれる人もいますが、掛け軸や額縁一つで何万円も経費がかかりますから、お金にはなりません。お金のことをいうといい顔されませんが、やっぱりお金は評価だから大事です。趣味でやっている人は「私のなんか」といって謙遜するけど、きちんと評価されることが大事だと思います。年を取ってから何かはじめた人は、町内会でもバザールでもいいから、作ったものは売ればいい。それが自分のプライドにもなるし、誇りにもなります。最近はシニアハウスのスペースを借りて先生を呼んで、三越劇場のコンサートで踊る社交ダンスの練習をしています。シニアハウスでの友人も習いに来てくれて、なかには94歳の人もいます。その方たちは私のライブにも来てくれて、うれしかったですね。ここではとてもいい関係を築けています。

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 私はずっと母との関係に葛藤を抱えていましたが、46歳のときに自己主張ができるようになり、ようやく解放されました。だから、その倍の92歳まで生きると決めています。今82歳ですから、あと10年。このまま自分の人生を「わが・まま」に生きていきます。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。