アメリカは女性の政治進出に関して進んでいる国ではない。女性議員の数は連邦上下院ともに議員の3分の1以下だ。大統領選に出馬する女性は、過酷な性差別にさらされる。初の女性大統領に最も近づいたともいわれるヒラリー・クリントンは、女性は外見から信条に至るまで男性よりも厳しく判断され、その眼差しは、権力に近づく女性ほど強くなると語っている。2020年、民主党の大統領選では6名の女性候補が争ったが、男性候補に比べて否定的な報道が明らかに多かった。

「あの顔を見てみろ。だれが投票するだろうか」

 有色人種の女性候補者になると、フェイクニュースやバッシングの標的にされる可能性が白人候補者の2倍高いともいわれる。共和党でもカーリー・フィオリーナが2016年大統領選に挑戦したが、ドナルド・トランプから「あの顔を見てみろ。だれが投票するだろうか」といった罵声を浴びせかけられた。

 

 2024年大統領選挙が1年後に迫る今、初の女性大統領が生まれる可能性はゼロに限りなく近い状況だ。共和党の候補者争いでは、インド系で国連大使の経験もあるニッキー・ヘイリーが唯一の女性候補者であり、ここに来てフロリダ州知事のロン・デサンティスと2位を争うようになっているが、それでもトランプには30ポイント近く差をつけられている。

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 トランプ台頭以降、共和党はますます過激な性差別主義者を支持層に抱えるようになっている。2021年1月に起こった連邦議会議事堂襲撃事件への関与を問われ、有罪判決を受けたメンバーも属するオース・キーパーズやプラウド・ボーイズといった極右団体は、女性差別を公然と掲げている。トランプとも親しい白人至上主義者ニック・フェンテスは、「女性に選挙権がなく、職場に女性がいない世界が理想的」だと語っている。