――あのシーンはエピソードとして実際にあったことなんですよ。
小泉 すごく穏やかな2人の時間ですよね。その後の、俊夫さんが追い詰められていく中での張り詰めた時間というのと、すごく緩急があって。ホッとしたり、ドキッとしたりっていうのが表現されていますよね。
それとコミックスの表紙のカラーがすごい。すごくいいんです、色使いが。
――3巻とも、マサコちゃんとトッちゃんの夫婦が明るい表情で描かれています。
小泉 2人の上にどれも空が広がっているんですよねえ。2人はいつもって感じで。本当に普通の人に起きたことだと伝わってきます。
「私も事件の真実を知りたいと思っていた」
――小泉さんが赤木雅子さんと知り合うきっかけは何だったんですか?
小泉 雅子さんが相澤さんと『私は真実が知りたい』(文藝春秋)という本を出した時です。私も事件の真実を知りたいと思っていたので、この本について書かれていたSNSに「いいね」したんですよ。そしたら雅子さんがそれに気づいて、私にお手紙をくださったんです。
それを見て、「この人は一対一でちゃんとお付き合いしようとする人なんだな」と思ったので、私もそうしようと思ってお返事を書きました。それからLINEを交換したりして連絡を取り合って、直接お会いすることになりました。
実はそれより先に、ドラマのお話があったんです。『新聞記者』という、赤木さんの事件をモデルにしたNetflixのドラマです。その中で雅子さん役として最初、私にオファーされていたんですが、「雅子さんの気持ちに寄り添いたい」という私の考えと、制作側がしていることがずれていってしまったので、途中でお断りしたんです。そういういきさつも雅子さんの耳に届いていたようで、それで実際に会って気持ちが通じ合ったのではないでしょうか。
――小泉さんが雅子さんを応援するのはどうしてなんでしょう?
小泉 やっぱり最初の「一対一でくるんだな」っていう時に、私も一対一で返したから……。そうなったらもう心は友だちだし、友だちはほっとかないですよね。そういう感じがあります。こっちも一線を越えて一対一で向き合わなきゃなって覚悟して返事をしたので、もう「仲間」とか「友だち」とかいう言葉に近いんですね、私が感じている感情が。
◇
“キョンキョン”に「友だち」と呼んでもらえる。こんなうれしいことがあるだろうか? 実はインタビュー会場の隅には赤木雅子さんも同席していた。この言葉を聞いて思わず涙ぐんでいた。
写真=三宅史郎/文藝春秋