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 その後再開して、今のメルマガはかれこれ5年以上続いていますね。「二度と廃刊させまい」と誓って、どんなに忙しくても、寝ていなくても、メルマガだけは絶対に出す覚悟で締切を守っています。

 自分に専門知を強制的にインプットする仕組みとして、とても重宝しています。

(3)「横の文章を縦にする」だけの仕事はしない

 情報のインプットで心掛けているのは、どんなに忙しくても、一日のどこかで「専門書の1チャプターは読む」、もしくは「論文を1本読む」ということです。

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研究室にあった愛読書『世界の傑作機』 ©文藝春秋

 流し読みになってしまうこともありますが、学術的なものをそのくらいのペースで読んでいかないと、自分の「データ解釈力」が落ちるのがわかる。専門的な文献を読みながら、触れた情報を次々に「Evernote」に保存していきます。

 いちばん大切にしているタグのつけ方は、「事実」と「論文」をしっかり分別することです。

 事実が書いてある情報と、それをもとに分析した論文・論考をしっかりと分けておくと、後から検索しやすい。日常からしっかり情報を整理しておけば、膨大な過去の情報や先行研究を気軽に参照しながら、執筆することができます。

 ものを書くときに気をつけているのは、「横の文章を縦にする」だけの仕事はやめようということ。今の自動翻訳はとても優秀ですから、翻訳しただけのアウトプットは、ますます意味がなくなってきている。文法が守られているロシア語の文章であれば、翻訳サイトの「DeepL」を使えば、多少、軍事用語はおかしくなりますが、問題なく日本語で読める時代になりました。

 だからこそ、「外国のメディアがこう書いています」と紹介するだけでは意味がない。書かれていることの背景を説明できることに価値がある。つねに翻訳者ではなくて解説者でありたいと思っています。

本記事の全文、小泉悠氏による「水タバコ屋で気分を上げる」は、「文藝春秋」2024年1月号、および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。