「向こうの自転車まで乗せていくからね」
それでも、堂上直倫は良いんです。先週観戦したハマスタでの横浜三連戦、イニング間にレフトのアルモンテとキャッチボールするのも直倫なら、スリーアウトを取ったナインを出迎えるために真っ先にベンチを飛び出すのも直倫。中日が3タテを食らったので、直倫の出番はありませんでしたが、そこにはカメラには映らない場所で必死にチームを支えている直倫の姿がありました。
かつて地元名古屋のラジオ局が中日の選手に行った「自分が女だったらチームメイトの誰と付き合いたいか?」というアンケートで、各選手から1位指名を受けた直倫。パールライスのイベントで小笠原慎之介から「好きになっちゃいそうです」と言われ、「あまりタイプじゃない」と返して、ちゃんと会場を盛り上げた直倫。北谷キャンプでの移動の際に、自転車の後ろに亀沢恭平を乗せて「向こうの自転車まで乗せていくからね」と優しく語りかけ、ペダルを踏んでいた直倫を僕らは知っています。
贔屓チームがあるプロ野球ファンならみんな思っているはずなんです、「このチームを一番好きなのは自分だ」と。だけど、直倫より中日ドラゴンズのことを考えられていますか?って聞かれたら、僕はちょっと自信ないんですね。野村克也さんはかねてから「エースと4番は育てられない」と述べていますが、直倫のような選手も、育てようと思って育てられる選手じゃないと思います。「竜の一族」として生を受け、今もその一員として心血を注ぐ選手なんて、一朝一夕では出てこないはずです。
高橋周平が慣れないセカンドへコンバートされた事情も手伝ってか、森繁和監督も開幕前の構想で「今のウチには必要な選手」と明言しています。今日も勝ち越していたら、9回から守備固めに入る堂上直倫の名前がコールされることでしょう。その度に僕は、ストッパー田島慎二の名前がコールされる時の高揚感とは違う、「あゝ、中日ドラゴンズに堂上直倫がいてくれてよかった」そんな安堵感を覚えるんです。
順調に行けば、直倫は今季中に国内FA権を取得するはずです。でも叶うことなら、これからもずっと「中日の堂上直倫」でいて下さい。
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