高層マンションが50棟も集まる巨大団地
その実態を探るべく貴州省貴陽市郊外にある団地を訪ねた。市中心からはバスで1時間近くもかかる不便な場所を訪れると、忽然として十数階だての高層マンションが50棟も集まる巨大団地が出現した。碧桂園が手がけた物件だ。敷地出入り口は顔認証カメラ付きのゲートが設置され、コンシェルジュも待機しているハイソなマンションだが、住民の姿はまばらだ。夜になると、窓に明かりが灯るのは全体の2割に満たない。近隣の店舗も空きが目立ち、ゴーストタウンの雰囲気が漂う。ほとんどは投資用に購入し、入居せず空室のまま放置しているのだ。
しかし貴陽市の中古マンション価格はこの2年で1割ほど下がっている。現地では「不動産価格は下がらないという貴陽の神話が崩壊した」と騒ぎになっている。住宅ローンを抱えた購入者たちは気が気ではないようだ。なにせ供給過剰は続く一方で、価格が戻る見込みは薄いのだという。このような明かりの灯らぬマンションは中国全土に無数にある。
「不動産の供給は過剰だ。果たして空室がどれほどあるのか。30億人が住めるだけの物件があるとの意見もある。さすがにこれは過大だろうが、14億人分以上はあるだろう」
賀鏗・元国家統計局副局長の発言だ。中国共産党内部からも異常なまでに積み上がった住宅在庫を危惧する声が上がっている。
致命的な打撃を受ける可能性は…
中国不動産の現状を見ると、バブル崩壊は免れられないかのように思える。専門家の間では「中国は日本化するのか?」が話題となった。「失われた30年」とも呼ばれる日本が経験した長期低迷、中国も後を追うのではないか、と。
中国経済が転換点を迎えていることは事実だが、日本とは状況は大きく異なる。日本のバブルは三大都市圏が中心で、崩壊後の価格急落も都市中心だった。中国ではむしろ問題は地方や郊外に集中しており、大都市部は需要も旺盛で値下がり幅も少ない。