2023年は、長年、芸能界のタブーとなっていたジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏の性加害問題が一気に明るみに出た年だった。
取材した被害者の数は34人
ジャニーズ事務所が外部に委託した「再発防止特別チーム」が8月末に公表した調査報告書には、〈少なく見積もっても数百人の被害者がいるという複数の証言が得られた〉と記されている。9月にはジャニーズ事務所も性加害の事実を認めて謝罪した。
私は「週刊文春」のジャニーズ性加害問題取材班のキャップとして3月から取材にあたった。本稿執筆時点で特集記事は29回を数え、取材した被害者の数は34人にのぼる。
週刊文春では過去にも1999年から翌2000年にかけて、14週にわたるキャンペーン報道を行った。ジャニーズ事務所は名誉毀損で訴えたが、裁判でも2004年、性加害の真実性を認める判決が確定した。だが、この事実を新聞、テレビの大手メディアはほとんど報じることなく、その結果ジャニー氏の蛮行は続き、新たな被害者が生まれ続けた。
上の世代の元ジュニアも続々と呼応
23年に状況が変わったきっかけは3月の英国BBCによるドキュメンタリーの放送。そして、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏(27)が4月に週刊文春で実名、顔出しで取材に応じ、直後に日本外国特派員協会で記者会見を行ったことだ。これによって新聞、テレビもジャニー氏の性加害を報道することへと大きく舵を切った。
興味深かったのは、カウアン氏が告白した理由が社会正義といった大それたものではなく、「自分に嘘をつきたくない」とあくまでも自身の生き方を顧みた末の行動だったことだ。
だが、彼の個人的行動に、もっと上の世代の元ジュニアたちが続々と呼応し、週刊文春の取材に、実名、顔出しで応じるようになった。