ジャニー氏の被害に遭った少年たちの多くは10代前半で、大半が初めての性体験だった。その後遺症は深刻だ。女性との行為中に被害を思い出して支障を来してしまう人、逆に被害を忘れようと無軌道な女性関係を次々に結んでしまった人。うつ病を患って働けず、生活保護を受給して暮らす人。取材した誰もが生活のふとした瞬間に体験を思い出すフラッシュバックの症状を抱え、一生治らないだろうと打ち明けた。
10月、ジャニーズ事務所は記者会見を開いて新体制を発表した。同事務所は「SMILE―UP.」に改称し、ジャニー氏の被害者の補償を終えた時点で廃業する。新たにマネジメントのための会社を作り、タレントは新会社と契約を結ぶ。ジャニー氏の姪でジャニーズ事務所前社長の藤島ジュリー景子氏は新会社の役員にも株主にもならず、一切関わりを持たないという。
性加害だけではない問題点
ジャニーズ事務所の問題は性加害問題だけではない。アメとムチを使い分けたメディアコントロールは、あらゆるスキャンダルを覆い隠した。ジャニーズの名前は消えたが、その体質も果たして変わるのか。それは当然メディア側も問われている。
芸能界において、権力を背景にして、若い男女を性的に搾取するのはジャニーズ事務所に限った話ではない。ジャニー氏の問題を契機に、元ジュニアたちのような被害者が生まれない環境づくりが進むのか。注視していきたい。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。