今年3月28日に、71歳でこの世を去った坂本龍一は、YMOをはじめポップ・フィールドでの活動に加え、現代音楽やワールドミュージックまで幅広い音楽シーンで偉業を成し遂げた。

サントラ制作が条件だった「ヨノイ大尉」

 そのジャンル横断的な才能と手法が、最も活かされたのが映画音楽の分野だろう。最初に手がけた『戦場のメリークリスマス』で、坂本はヨノイ大尉役で俳優としても出演。大島渚監督からのオファーに、サントラをやることを条件に引き受けたというが、そのメインテーマ「Merry Christmas Mr.Lawrence」は、アタマ5音階のインパクトと曲のわかりやすさで、坂本の最も有名な曲となった。

『戦場のメリークリスマス』 ©RECORDED PIC-CINEVENTURE-ASAHI/UNIVERSAL/Album/共同通信イメージズ

 自身のソロ・アルバムでは実験的でアカデミックな作風が多いが、俳優として出演したことで、映画の世界観が坂本の頭に音像を描きやすかったのかもしれない。

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東洋と西洋の交錯を表現する“坂本効果”

 同様のことは、日本人初の米国アカデミー作曲賞を受賞した『ラストエンペラー』にも言える。ベルナルド・ベルトルッチは、坂本にまず甘粕正彦役でオファーし、撮影中に劇中の楽曲制作を依頼、撮影終了半年後にサントラも頼むという異例の形をとった。