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当初は『戦メリ』と同じくシンセサイザーを用いる予定が却下、オーケストラと中国の伝統楽器・二胡を重ね合わせたオリエンタルな名曲が完成した。
どちらの映画も西洋と東洋の交錯が、音楽でも表現されている点が、坂本を起用した最大の効果だろう。ベルトルッチ作品では『シェルタリング・スカイ』でも、哀切かつドラマチックなメインテーマを書き下ろした。名キャメラマン、ヴィットリオ・ストラーロの映像美と、坂本のスコアの融合は、ベルトルッチのオリエンタル路線に欠かせないピースだった。
主人公の孤独に寄り添うピアノの響き
日本映画では、村上春樹原作『トニー滝谷』の、イッセー尾形演じる主人公の孤独に寄り添う、幻想的なピアノの静謐な響きが印象深い。市川準監督による実験映画的色彩の濃い作品だが、低予算でもそれに見合う編成で、印象に残るテーマ曲を生み出しているのはさすが。
「『ボレロ』みたいな曲に」に怒って…
傑作とは言い難い映画だが、ブライアン・デ・パルマの『ファム・ファタール』も味わい深い。序盤、1億ドルのダイヤを盗み出すシーンで延々流れる、ラベルの「ボレロ」そっくりの「Bolerish」という曲は、監督から「ボレロ」みたいな曲にしてくれと頼まれ、坂本が怒って書いたという。ただ、元来デ・パルマはヒッチコックの模倣をやりたがるので、全てがパロディと考えれば坂本のアプローチも間違ってはいないのだ。