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高齢者の高血圧や高血糖などが、一つずつ多発的に起こることが多いことを思えば、大学病院型の医療を学んでいると「薬漬け」の所以はさらに明確になるのです。

現在の50代より若い開業医は、ほとんどが大学病院の臓器別診療のトレーニングしか受けていません。

さらに80年代から盛んになった専門医制度は、ほとんどのものがある臓器の専門医の称号を与えるというものです。

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それなりに厳しい条件をクリアし、それなりの難しい試験に合格しないと得られないものですが、逆にそれをとってしまうと、それを手放したくないのが人情です。

5年に一度くらいの更新のために、その臓器の勉強を続けないといけません。

ということでその臓器については最新の知識を学ぶことになるのですが、よけいにほかの臓器の勉強の時間がとれなくなるというパラドックスが生じます。

「薬漬け大国」になってしまう構造

このような臓器別診療のために、開業医にかかっても、その医者の専門の臓器については大学病院のすすめる標準治療、それ以外の臓器にはマニュアル本頼りになります。

この流れをくんだ開業医の多くが頼りにするマニュアル本の標準治療では、ほとんどの病気で一つの病気に対して2~3種類(5種類のこともあります)の薬を飲ませるといいということになっているため、4つの症状を抱えている患者さんは8種類~12種類もの薬を処方されることになるのです。

ちなみにマニュアル本では、他の病気が合併していることは、ほとんど考慮に入れられていません。

何度も繰り返しますが、その一方で、総合診療を学んでいない医者は自分の専門外の臓器には他になす術がない。

だから病状の数だけマニュアル本どおりに薬を処方する。「こんなにたくさんの薬を飲むと胃が荒れますので、胃薬も出しておきましょう」と、2種類くらいの胃薬も出すので12種類の薬が14種類になってしまう。

これがこの国が「薬漬け大国」となってしまった理由なのです。