「窪さんの小説は、身近な人の話を聞いているような感覚でした」
peco どう伝えればryuchellに寄り添えるのか、あの時は一言発するのにも頭をフル回転させて、心理戦のようでした(笑)。そうした積み重ねの中で、ryuchellが「夫の立場からは降りたいけど、家族としては一緒にいたい」と思っていたことがわかりました。だけど、それを私に提案するのはワガママ過ぎると思って躊躇していたそうです。そこから、三人で家族として続けるために、戸籍にとらわれない関係性を考えていけました。
「海は海、コロはコロ、美佐子さんは美佐子さん、俺は俺、みんなそれぞれ違う人。だけどいっしょにいたいから」(窪美澄『ぼくは青くて透明で』より)
“普通のお家”が羨ましかった時期も
――窪さんの『ぼくは青くて透明で』は、自分を置いて出ていった両親にかわって、父の再婚相手である美佐子に育てられた青年・海(かい)が主人公です。昔からかわいいものが好きで、“普通の男の子”から外れていると自認する海が、同級生の男の子・忍と恋仲になる中で、“普通の家族”“普通の恋愛”とは何かを問いかける物語です。
窪 私自身も離婚しているんですが、両親も離婚していて、中学の時に母親が子ども三人を置いて出ていってしまったんですね。当時はまだ離婚がタブー視されていたところもありましたし、厳しいカトリック系の学校に通っていたこともあって、家族のことを誰にも言えなかったんです。“普通のお家”が羨ましかった時期もありましたが、大人になってみると、「普通のお家って一体何?」と問い直すことが増えました。
peco 窪さんの小説は、私たちのこともそうですし、LGBTQのお友だちもたくさんいるので、身近な人の話を聞いているような感覚でした。海が“普通”について語るセリフもすごく素敵で。
「ぼくはみんなの『普通』にあれこれ言わない。だから、ぼくの『普通』にもあれこれ言ってほしくない。ただそれだけ」