青粉入りタケノコ天、酢みそあえ、さらにはカツ煮も
薄暮のしんみち通りは、花見客などが繰り出して人通りもにぎやかだ。少しずつ店が入れ替わったりしているようだ。
野村さん曰く、今年の冬は「牡蠣天バター」がつまみでは人気だったが、販売は終わり。いまは「カモ焼き」、「政吉カツ煮」などが人気だという。
そんな話をしていると「ネギと菜の花の酢みそあえ」が登場した。ダッタンそばのむき実を炒って細かくしたものが酢みそにかかっている。それが香ばしくうまい。ネギも立派だ。
「青粉入りタケノコ天」は青のりをペースト状にしたものをタケノコに塗って天ぷらにしたもので、海の香りとタケノコの山の香りが相俟ったアツアツの一品である。
そばはイナサワ商店の生そばを都度茹でて提供している。早速、人気の「鴨ブツつけそば」570円と定番の「たぬきそば」360円を注文した。
政吉で最近ブームなのは「あなご天つけそば」
「四谷政吉」は初代店主西山さんが1994年に創業し2013年まで営業した。初代店主が引退後、生麺や食材を提供していたイナサワ商店が屋号と味を引き継ぎ、2代目として営業を続けている。
初代の味として人気だった「小エビ天そば」や「カレーつけそば」などのメニューももちろん健在である。
隣のテーブルの紳士たちは「あなご天つけそば」550円を注文していた。「あなご天そば」500円とともに、最近はあなごブームが「四谷政吉」では続いているらしい。4月からは「たらこ天そば」580円も登場するという。
ほどなく登場した「たぬきそば」のつゆを一口。香ばしい自家製のたぬきの甘味と出汁のうま味がマッチしてアツアツでうまい。そばはもちろん生麺ゆで上げでコシがある。
西山さんの笑顔が目に浮かぶような味である。お元気だろうか。
桜、ほろ酔い、鴨ブツそば
友人が頼んだ「鴨ブツつけそば」も到着した。南蛮(ネギ)と鴨のブツ切りが入ったつけ汁とせいろそば、そば湯がついている。一口いただいたが、アツアツのカモ汁の香りがそばにからんで、これもよい出来栄えだ。温つゆと冷たいつゆのつけそばのメニューは、四季を問わずこれからもっと人気がでるだろうと思う。
立ち食いそば屋は、町の洋食屋や調理パン屋などと同様に、失われるには惜しすぎる「絶メシ」店の典型例といわれている。そんな中でも、「四谷政吉」は初代の味を守るだけでなく、さらに味を吟味し、新しいメニューを考えたり、ちょい飲みなどを始めたりと、うまく継代した成功例といえるかもしれない。
そんなことを考えながら食べていたら、友人の「鴨ブツつけそば」のつけ汁にどこからか風に舞った桜の花びらが一枚舞い降りた。暖かな春の気候の宵に、こうしたテラス席でそばを食べるのもなかなか良いものだ。
INFORMATION
政吉そば
新宿区四谷1-8 ヒロ四谷ビル 1F (しんみち通り沿い)
営業時間 10:45〜21:00
定休日 土・日・祝