子どもにとって拠り所となる熊本市の児童養護施設で、女児の胸を触り、裸を覗き見するなど複数の性虐待が続いた。加害者は当施設に勤務する30代男性だ。ノンフィクションライターの三宅玲子氏のもとには被害女性や、現場の元職員から証言が寄せられている。この件について、監督行政庁である熊本市こども家庭福祉部を取材した。
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「その後、加害は止まったという認識だ」
熊本市こども局こども福祉部を訪ねたのは2023年6月7日午後だった。
取材の冒頭、X氏による性虐待について聞きたいと説明すると、部長は「個別の案件について回答することはできない」と予防線を張った。だが、のちに《連載1》に記すことになる性虐待の証言をひとつずつ読み上げたところ、「施設職員の行動規範のレベルではないですよね、一般的にみて」と憮然とした。
伝えた内容については「把握している事実と、把握していなかった事実がある」とも答えた。
熊本市としてどの程度を把握しているのか、また行政指導を行ったかについて、部長は「すみません、細かなことは申し上げられません。いろんな情報はきていて、それに対して我々は調査は行っている」と前置きしながらも、問いを重ねていくごとに「勧告、行政指導は、口頭や文書や、これはオープンにはしていませんけど、対応はしてきています」「ご本人にも、施設長(理事長が兼任)にも、(指導したことは)ある。文書で出した経緯もある」と少しずつ答えた。
そうであれば指導内容の詳細を知るために情報公開請求をすれば開示するのかと聞くと、「そうですね。ただ、黒くなる(黒く塗りつぶすという意味)と思いますけど」とも答えた。つまり、当該施設に複数回、立ち入り調査を行い、口頭注意や文書での指導、勧告を行ったことを認めている。
性虐待をしたX氏が現在も女子施設に勤務し続けていることについて被害当事者や目撃者が反発していたことを伝えると、部長は「通告を受けて調査したのは2年前までのことで、その後、加害は止まったという認識だ。施設内の人員配置にまで我々は口を挟むことはできない」という。