9月30日午前7時ごろ、兵庫県宝塚市のマンションに住む宝塚歌劇団宙組の劇団員・有愛きい(25)が、マンション敷地内で死亡しているのが見つかった事件。
それ以来、劇団の混乱は収まらないが、同時に問われているのは、宝塚を運営する阪急電鉄とその親会社である阪急阪神ホールディングス(HD)のガバナンスの問題である。
これまで「週刊文春」では、阪急阪神HDの会長である角和夫氏が、有愛きいがマンション敷地内で死亡しているのが見つかった9月30日に阪急電鉄役員のゴルフ会に参加しており、事件の一報がもたらされたあとも、ゴルフ会を続行していたことを報じた(11月22日発売号)。角氏はその報道と同日、兼務していた宝塚音楽学校の理事長職を12月1日付で辞すると発表したが、宝塚歌劇団の理事職には今もついたままだ。
なぜ阪急阪神HDが劇団のハラスメント体質を抜本的に改革することができないのか。取材を進めると、“頭から腐る”体質の根深い闇が見えてきた――。
阪急の社外監査役を長らく務める
今回のキーマンは阪口春男なる人物だ。御年90。現役の弁護士である。
過去には大阪府入札監視委員会委員長や大阪弁護士会会長を歴任し、伊藤忠商事の監査役を務めたこともある。
「いわゆる“ブル弁”(高給取りの弁護士)で大企業をクライアントに持つ。角氏がトップになって以来、阪急の社外監査役を長らく務めています」(弁護士)
阪口氏は角氏が2006年に阪急阪神HDの社長になると、監査役に就き、2020年まで務めた。阪急電鉄の社外監査役も2006年から現在まで務め続けている。
お互いがお互いを利用し合う関係
「そら角さんのアレやわ。親の知り合いやから……」
そう明かすのは、阪急電鉄の元役員だ。一体どういうことか? 角氏の実兄・源三氏に話を聞いた。
「角家は私を含め三代続けて弁護士。父・恒三の弁護士事務所に勤務していたのが、阪口先生です。和夫が10歳の頃、父は心臓発作で急死。父が担当していた仕事を主に引き継いだのが阪口先生でした。先生と弟は、お互いを利用し合う関係で、先生は弟に仕事をもらい、弟も先生に頼ったのでしょう」