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代議員名簿に松竹氏の支持者が入らないように画策?

 松竹氏の再審査請求を受けて、共産党は、党大会でこの問題が議題にならないよう、画策しているようだ。

佐藤 党本部は対応に苦慮していることでしょう。

 松竹 全会一致で否決したいので、代議員の名簿に私の支持者が1人も入らぬように画策しているようです。また、「党大会に1200字までなら意見を出してよい」という規定があるのに、今回は「党大会決議案に対する感想・意見・提案をお寄せください」と書かれています。

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 佐藤 大会決議案には、松竹さんの除名については書かれていないから、意見は出せないわけですね〉

「安保廃棄以前の自衛隊活用」で志位委員長に自己批判を求められた

 共産党を大きく揺るがしている「松竹氏の除名問題」の淵源は、2005年春にまで遡る。

佐藤 2006年に党本部を退職されたのは、志位さんとの意見の相違が原因ですね。

23年間トップに君臨する志位和夫氏 ©時事通信社

 松竹 意見の相違が表面化したのは、2005年春、私が党の月刊誌『議会と自治体』に「九条改憲反対を全国民的規模でたたかうために」という論文を寄稿した時です。改憲問題が日本政治の焦点となってきた局面で、国民世論は「九条も大切だが、自衛隊もリスペクトしている」と分析し、「今後、共産党は九条支持派と自衛隊擁護派を繋いで、護憲の多数派を作る重要な役割を果たせるのではないか」と主張しました。

 佐藤 しかしこの論文に、志位さんから物言いがついた。

 松竹 「侵略されたら自衛隊で防衛する」という党の立場は、「安保条約が廃棄されて以降の方針で、それ以前にも自衛隊を使うという考えは間違いだ」というものでした。そこで、雑誌の次号に自己批判文書を載せるように求められたのです。

 しかし私は、「自衛のためでなく自衛隊を使うのは間違いだが、侵略された場合は、安保条約の有無に関係なく自衛隊を使うのが当然だ」という主張は変えずに、「自衛隊が違憲だと論文中に書いていないこと」についてのみ自己批判する文章を雑誌に載せて、党本部を退職しました〉

ある知人は「共産党を辞める必要はなかったのでは」と

 ところが、松竹氏に「自己批判」を迫った志位氏自身が、「自衛隊」と「安保条約」に関する立場を180度変えている。

佐藤 しかしその後、志位さん自身が立場を大きく変えています。

 2015年、新安保法制の成立直後、共産党は、新安保法制廃止をめざし、「国民連合政府」の樹立を呼びかけ、そこで「野党による連合政権ができた場合、安保条約廃棄にこだわらない」としました。

 さらに会見で、「自衛隊を活用することは当然」と発言しています。

 松竹 「安保条約が廃棄される以前にも自衛隊を使うという考えは間違いだ」と私に自己批判を求めた立場とは180度変わっています。ある知人からは「共産党を辞める必要はなかったのでは」と言われました。

今月4年ぶりに党大会を開催 ©時事通信社

「安保廃棄以前の自衛隊活用」を志位委員長自身が容認

 佐藤 志位さんの立場は、かなり揺れているわけですね。

 松竹 志位さんは、2000年の党大会で、不破哲三さんの後任として党委員長となりますが、この大会で「(自衛隊の存在を憲法違反とした上での)自衛隊活用の方針」を決めたのは不破さんです。田原総一朗さんの『サンデープロジェクト』での発言がきっかけでした。

 この不破さんの方針に志位さんとしては、どこか納得できないものがあったのでしょう。だから、2005年の私の論文を断固否定した。

 佐藤 でも、10年後にはそれを自分で翻した。結局、松竹さんを除名したのは、志位さん自身が悩みながら揺れ動いてきた歴史を直視したくないからですね〉

 松竹伸幸氏が佐藤優氏と「除名」問題を徹底的に論じた「志位委員長よ、なぜ私が除名なのか」は、「文藝春秋」2024年2月号(1月10日発売)、および「文藝春秋 電子版」(1月9日公開)に掲載されている。