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「テレビメディアは『オワコン』になるのかどうか真剣に考えなければならない」テレビ東京・元プロデューサーが明かす“配信サイト”への本音

『混沌時代の新・テレビ論』より #2

2024/01/25
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著作権侵害に関わる、現場でのある出来事

 以下は実際にあった話である。ドラマの撮影の際に、居酒屋でのシーンを撮るために制作陣がある店にロケハンに行った。芝居場となる背景がさみしいとのことで、監督が「何かポスターのようなものをここに貼って」と要請した。「わかりました」と助監督は答え、美術にポスターを発注した。

 撮影を終え、放送は無事にすんだ。

 と思っていたら、ある日突然、視聴者から局に電話がかかってきた。

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 聞けば、そのドラマで使われたポスターの図柄が自分の作り出したキャラクターそっくりだというのである。

 美術に確認したところ、助監督が持ってきた図案通りに作っただけで何がどうなっているかまったくわからないという。助監督に聞いてみると、サイトを見ていたらちょうどよさげなデザインがあったのでそれをプリントアウトして美術に渡したが、そのときに「くれぐれも著作権に引っかからないようにお願いします」と何度も念押ししたはずだの一点張りだった。

 結局、電話をしてきた視聴者には事情を正直に話して丁重に謝り、いくばくかの著作権料を支払って納得してもらうことでことなきを得た。もし相手が無茶を言ったり悪質なクレーマーだったりしたら大変な事態に発展していたかもしれない。

 問題のポイントは、発注した助監督、ポスターを作った美術、そしてそのチェックを怠ったプロデューサー、以上の三者全員に瑕疵があったということだ。

 まず助監督が「著作権に引っかからないようにしてほしい」とお願いしている時点で、そのデザインを無断で使うことはヤバいと認識していたということがわかる。

 美術もそうお願いされたら「それってヤバくない?」と言い返すこともできたはずなのに、それをそのまま看過して使ってしまった。

 私がもっとも罪が深いと考えるのが、プロデューサーである。

 プロデューサーは最後のチェック機関である。上記に挙げたようなことをすべて気づいて排除してゆくのがプロデューサーの仕事だ。それを見逃したのか、もしくはチェックを怠ったか、どちらにしても番組の最高決定権者としての責任は重い。

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