2015年に始まった民放公式テレビ配信サービス「Tver」。利用者は右肩上がりで増え続け、いまも快進撃が続いている。しかし、元テレビ東京プロデュサーの田淵俊彦は、「バラエティ番組」はこのビジネスに貢献できていないという。
地上波テレビではゴールデン帯で放映されているバラエティ番組が、なぜ配信になるとビジネスに貢献できなくなるのか。ここでは、田淵氏の著書『混沌時代の新・テレビ論』(ポプラ社)の一部を抜粋。バラエティ番組不人気の理由を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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番組再生ランキングは「ドラマ」の独壇場
テレビ局の救世主とも言えるのがTVerというビジネスモデルである。このステージでどんなポテンシャルを発揮できるかが、テレビのゆく末を決めると言っても過言ではない。
2023年8月、TVerの月間ユーザー数が3000万MUBと過去最高記録をさらに更新したことがわかった。
MUBとはMonthly Unique Browsersの略で、文字通り月間のユニークブラウザ数を意味している。ユニークブラウザ数はTVerを訪れた重複のないユーザーの数をあらわし、ひとりのユーザーが何度TVerを見ても「1人」とカウントされるため、データの精度と信頼度が高い。
TVerは2023年に入って、MUBの最高新記録更新が今回で5回目。快進撃が続いている。
しかし、ジャンル別に見ればバラエティはこのビジネスに貢献できていない。
みなさんのなかにはもちろん、「バラエティが好きだ」という方もいらっしゃるだろう。まずはデータから分析してみよう。
2023年8月にTVerから発表された「2023年4~6月期 総合番組再生数ランキングトップ20」に目を向けてみたい。
表を観てわかるように、1位の木曜劇場『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ)をはじめとして10位内にランクインしているのはすべてドラマだ。
一方、バラエティは12位に『水曜日のダウンタウン』(TBS)がランクインしたが、20位に入っているのはこの番組を含めてわずか3作品のみ。完全にドラマの独壇場である。
なぜ配信において、バラエティの再生数が伸び悩んでいるのか。
その理由は、現在のテレビにおけるバラエティ番組の特徴を冷静に観察してみれば平明である。