リアルタイム視聴にこだわる演出手法の弊害
さらには、これらのバラエティ番組がリアルタイム視聴率にこだわることの弊害が番組内における演出手法に顕著にあらわれている。
リアルタイムで視聴してもらうために、視聴者が嫌がるとわかっていて、ある「手法」をあえて頻繁に使うことになるからだ。「視聴者が嫌うバラエティの演出手法」とは何か。
それは次の3つに集約される。
1.あざとい「CMまたぎ」
2.過剰な映像の「リフレイン」
3.おおげさな「あおり」、それによる「ネタバレ」
以上はどれも読者のみなさんが日頃から感じていることではないだろうか。
あざとい「CMまたぎ」は思わず「えー、そんなところでCMにいくの〜」と叫びたくなるような手法だが、何度も繰り返されるといい加減にその番組を見るのが嫌になってくる。
何度も繰り返し同じ映像を見せられ、挙句の果てに「スローでもう一回」とか言われるとこれも腹立たしく思えてくる。「このあと、衝撃の事実が!」などとあおりにあおっておいて「衝撃でも何でもない事実」を見せられると興ざめするし、「このあと、ひどい仕打ちを受けた〇〇が答えた言葉が神対応だった!」とあおられても筋書きをすべて語られてしまっているので、ものごとの成りゆきを推測する楽しみもない。それどころか、見ているこちら側の想像力を疑われているような気がしてきて悲しくなる。これら3つの演出手法は視聴者にとって何のいいこともない。
視聴者を少しでもつなぎとめておきたいテレビ局と、番組という「おまけ」で釣ってCMを見させたいスポンサーだけが得をするのである。
気がついてはいるけれど…
現場のクリエイターたちは、こういったバラエティの演出手法の弊害に気がついていないわけではない。気がついて「やめたほうがいい」と思っている。
だが、やめられないのだ。
彼らは「0.1%でも視聴率を上げなければいけない」という事情に疑問を抱きながら、続けているのである。
そこには、テレビ局のマネタイズというあくなき欲求がある。
「配信の場では自由な作品が作れるのに、テレビではこんなことをやり続けなければならないのか……」
そんな虚しさを抱いたクリエイターたちが、テレビの現場から離れてゆくのは当然なのだ。