病理学。著者の言葉を借りれば〈病気はどうしてできてくるのかについての学問〉だそうだ。医療情報が氾濫する昨今、正しい情報を手に入れるには、病気のメカニズムを理解したほうがいい。本書はそんなニーズに応えてくれる。
「著者は長年、大阪大学医学部で病理学を講義しておられます。その経験を活かし、わかりやすく、読んでいて飽きないおもしろさのある病理学の入門書を書いていただきました」(担当編集者の安藤聡さん)
本筋の周辺に豊富な雑学を取り混ぜ、難解な専門用語を使った説明はみずから「わかりにくい」とつっこみを入れてから噛み砕く。脱線に満ちたユーモア溢れる語り口は、純粋に読み物として楽しい。
主な参考文献は、著者が講義でも使用している、病理学の教科書では世界的ベストセラーのロビンス『Basic Pathology(基礎病理学)』。その全24章中の3章分にあたる、病理学の基礎中の基礎となる細胞、そして血液の構造と、読者の切実なニーズがあるがん(腫瘍)の解説を取り上げた。
「医学的な正確性や厳密性を担保するには、それなりの文章量が必要になります。しかしあまり大部の本となると読書のハードルが上がってしまうので、内容を絞りました。図版をおさえ目にしたのも、論理でまず理解していただきたかったから。ビジュアル化することで逆に誤解を生む可能性もあるんです」(安藤さん)
2017年9月発売。初版5000部。現在17刷6万2000部