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「ネコは癒しだけど、ちょっと大変」

 同じペット世帯スペースに、疲れた表情で座る17歳の高校生と14歳の中学生の姉妹がいた。足元のケージの中でネコがすやすやと寝ている。

「今日は夜中の3時にネコに起こされました。逃げて行っちゃうと困るから、ネコが起きている間は監視しないといけません」

 連れてきたペットの面倒を見る分、ペットのいない被災者よりも負担がかかる。

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「ネコには家に残ってたペットフードをあげてます。ネコは癒しだけど、ちょっと大変」

 避難所の廊下で、5歳の息子と3歳の娘を遊ばせている30代の女性もネコを飼っていると話す。だが、その姿が見えない。

「夫が仕事に出かける時、ついでにネコを自宅に連れて行ってくれるんです。壁にひびがはいってぐちゃぐちゃになった我が家ですけど、ネコタワーは潰れずに済みました。ネコも慣れない生活でストレスがたまるので、日中はせめて気ままに遊んでてもらおうかと」

 ペットたちもまた被災して家を追われた。人間同様、非常事態のただ中にあるが、意外なほど大人しく見えた。ペット世帯用の避難所を運営しているスタッフは「意外にもトラブルは起きていないようです」と語る。

 記者が話を聞いてまわっている最中、潤んだ瞳でイヌがインコを見つめていた。飼い主の背中に止まったインコはその視線に気づいたのか、まるで互いを励ますように「くっ」と鳴いた。

避難所で生活するペットのインコ

 東日本大震災では48頭、熊本地震では10頭の犬を保護したNPO法人「日本動物介護センター」理事長の山口常夫氏は、動物とともに避難生活を送ることの難しさを語る。

「災害直後は、『ペット連れの避難生活は難しいが、家族同様のワンちゃんは手放せない』と、車中や避難所でペットを世話する方が多い。ただ、ホテルや仮設住宅に移動する際にペットと一緒に住めなくなったり、また長引く避難生活でストレスがかかると、徐々にペットのことが重荷になる傾向が見られたりします」