「というのも、再審査規定が規約に盛り込まれた1958年以来、再審査請求は一度も行なわれたことがないからです。『除名処分の再審査を求めた例は過去にもある』『今回もこれまでの対応を踏襲することとした』というのは、完全なでっち上げです」
共産党の組織的特徴
さらに共産党の「非常識なやり方」をこう指摘する。
「再審査請求書は、昨年11月1日に提出しましたが、それから2カ月半あまり、党からは何の連絡もありませんでした。それで突然、私を党大会に呼ぶこともなしに、私が提出した『再審査請求書』を党大会に参加した約800人の代議員に配布することもなしに、一方的に『却下』を決定しました。この決定を下した『大会幹部団』のメンバーは21人。党大会でオープンに議論して決定したのではなく、わずか21人のいわば『密室』で決定されたのです」
共産党の組織的特徴は、「上意下達の階層構造」にある。
まず職場、地域、学校ごとに「支部」があり、その支部から選ばれる「各地区委員会(地区党)」があり、さらにそこから選ばれる「都道府県委員会(都道府県党)」があり、そこから選ばれる約800人によって、党大会(最高機関)が開かれる。
今回の党大会に参加する代議員の選出にあたっては、松竹氏への支持者が入らぬよう、「松竹氏への除名処分に賛成か、反対か」が、“踏み絵”に使われたようだ。
女性党員の勇気ある発言を糾弾した新党首の田村智子氏
しかしそれでも、「異論」を完全に抑えることはできなかった。党大会2日目の1月16日、神奈川県議団長の大山奈々子氏が“勇気ある発言”を行なったのだ。
「次に、松竹氏の除名問題で顕在化した党内民主主義の課題についてです。昨年地方選前に松竹氏の著作が発刊され、その後まもなく彼は除名となりました。(略)何人もの人から『やっぱり共産党は怖い』『除名はだめだ』と言われました。将来共産党が政権をとったら、国民をこんなふうに統制すると思えてしまうと。問題は出版したことよりも除名処分ではないでしょうか。(略)『除名』は対話の拒否にほかなりません。排除の論理ではなく包摂の論理を尊重することは、政党運営にも求められています」(『しんぶん「赤旗」』1月18日付より)
党大会は「自由な討論」が許される場であるはずなのに、この大山氏の発言を、次のように徹底的に糾弾したのは、他でもない“共産党初の女性党首”となった田村智子氏だ。
「異論」を「党への攻撃」とみなす
「党大会での発言は一般的に自由であり、自由な発言を保証している。しかし、この発言者の発言内容は極めて重大だ。私は『除名処分を行ったことが問題』という発言を行った発言者について、まず、発言者の姿勢に根本的な問題があることを厳しく指摘する」
「発言者は『問題は出版したことより除名処分ではないか』と発言しながら、除名処分のどこが問題なのかを何も示していない。(略)発言者が述べたのは、ただ、『党外の人がこう言っている』ということだけだ。党外の人が言っていることのみをもって処分が問題と断じるのは、あまりにも党員としての主体性を欠き、誠実さを欠く発言だと言わなければならない」
「異論」を「党への攻撃」とみなすのが、“共産党初の女性党首”の一貫した姿勢だ。
「発言者は『除名というのは対話の拒否だ』と述べ、包摂の論理を尊重することは政党運営にも求められていると述べた。しかし、対話を拒否したのは誰か。党を除名された元党員は、自分の意見を一度として党の正規の会議で述べたことはなく、一度として正規のルールにのっとって党に意見を提出したこともない。党内での一切の対話の努力をしないまま、党外からいきなり党攻撃を開始したというのが事実だ」
「党外から出版という形で党の綱領と規約を攻撃した者を除名処分にしたことは当然だ。問題のこの政治的本質を全く理解していないことに発言者の大きな問題があると言わなければなりません(拍手)」
「わが党は多数者革命に責任を持つ党として、組織と組織原則への攻撃を断固として打ち破り、党の統一と団結を固め合い、これからも民主集中制の組織原則に基づいて強く大きな党をつくり歴史を開く。この決意をここに表明するものだ(拍手)」(以上、『産経ニュース』1月18日付)
この「除名問題」と「共産党の閉鎖的体質」について、松竹氏は、作家・佐藤優氏との対談「志位委員長よ、なぜ私が除名なのか」(「文藝春秋」2024年2月号)で、詳しく論じている。
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