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「近所のお父さんお母さんと、よく子どもを遊ばせている公園があったんです。ところがある日、遊具がいきなり撤去された。役所に事情を聞いたら『危ないかもしれないじゃないか』と近隣から苦情があったというんです。でも、あの遊具はいつも子どもが遊んでいるもので危ないとは思えないし、実際に公園を使っている子どもや親の意見を聞かないで遊具を撤去するのもおかしい話ですよね」

おばさん連盟の選挙グッズは基本的に手作り。資金力の問題もあるが、台湾の既存政党の大量の選挙グッズが使い捨てであることへの問題意識もあるらしい ©安田峰俊

 日本でも2023年3月、長野市内にある児童公園に近隣の1軒からの苦情が繰り返され、行政が公園を閉鎖した例がある。他にも子どものボール遊びを禁止する公園が増え、近隣住民の苦情で保育園の開設が停滞し……と、一部住民のクレームによって、相対的に立場が弱い子どもの活動空間が狭められる話は多い。台湾は日本よりも騒音や他者の行動に寛容とはいえ、社会の少子高齢化が進むなかでやはり似たような問題は起きている。

「それで、他の親たちと議員に陳情に行ったりもしましたが、子育て世代や子どもに強く関心を持っていないと感じて。自分たちでやるしかないと思ったんですよ」

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 張淑惠の親子共学会はこのときすでに存在しており、電車に親子車両の設置を求める運動や公園の遊具についての運動をおこなっていた。そこでペイリンさんや他の親たちも仲間に加わることになったようだ。やがて2018年にメンバーらが無所属で地方選に立候補したところ手応えがあったので、翌年に正式に政党化した。

おばさん、台湾有事を考える

 党のホームページを見ると、おばさん連盟の主張は子どもの人権保護の法制化、労働環境の改善、カネのかかる選挙をやめて庶民の政治参加のハードルを下げること、環境保護と動物愛護などだ。子育てにかなり振り切っている特徴があるものの、ネタ的な党名とロゴマークに反して政策は全体的に「まとも」である。

ともと政党のカラーは別の色だったが、映画『バービー』に触発されて今回の選挙からピンク色に変えたとのこと。ちなみにイメージキャラのおばさんは、絵が上手な党員によるデザイン ©安田峰俊

 ほか、曲がりなりにも国政選挙に出ているだけに、「国家主権を守る」も公約に上げている。記述の分量は少ないが「国防改革・自主防衛・防衛力強化を支持し、中国による現状変更を防止し、すでに主権独立国家となっている台湾を守る」と、国防の言及もある。