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「体育館におうちができた!」能登半島地震で大活躍するインスタントハウス 原点はドラゴンボールの「ホイポイカプセル」

source : 提携メディア

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大地震が起きたトルコへ

2023年2月6日、ついに研究成果を見せる時が来た。トルコ南東部のシリアとの国境付近で、大地震が発生。日本赤十字の発表によると、倒壊した建物の数は数十万棟、トルコ、シリア両国で約6万人が犠牲となった。

「町がゴーストタウンに」というニュースを聞いて居ても立ってもいられなくなった北川さんは、以前から知り合いだったJICA職員の田中優子さんに連絡。トルコ事務所長の田中さんが被災したトルコ南部ガジアンテプ県アンタキヤ、ハタイ県ヌルダーの県知事や市長とつないでくれることになり、すぐ現地に飛んだ。

最初にヌルダーの町を訪ねてインスタントハウスの話をすると、すぐに具体的な話になった。担当者に100棟建てるのにどれぐらいの土地が必要かと尋ねられ、目安を示すと、「100棟分の土地を用意する」と確約してくれた。次に訪れたアンタキヤでも、歓迎された。

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問題は資金。現地で断熱材の発泡ウレタンを入手するとしても、Lサイズのものを100棟建てるには1億円以上必要になる。それだけの資金調達は難しく、最終的に現地で支援活動をしていた国際協力NGOピースウィンズ・ジャパンが購入するという形で、アンタキヤに3棟寄贈された。

北川さんは4月、アンタキヤに飛び、その3棟を自ら完成させた。政府職員や被災者の住居、倉庫として使われ、「涼しい」「快適」と絶賛された。しかし、100棟建てたいと言ってくれたヌルダーのことを思うと、すぐにすべてを届けられないことがもどかしかった。

「東日本大震災以来、安くて、快適で、早く建てられる住宅を目指していたのに、インスタントハウスはトルコの仮設住宅より高価で、お金が理由で建てらなかった。自分はなんのためにやってきたんだろうと思うと、悔しかったですね」

被災した子供たちを見て発した妻の一言

同年8月下旬、北川さんは妻と一緒にインドネシアのチカランにいた。トルコでの反響から、海外でもニーズがあると確信。いざというときに自分が現場に行かなくても住民が自力でインスタントハウスを建てられるように、ノウハウの伝え方や住民による作業の検証に行ったのだ。

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