能登半島地震の震源や被害の激しかった地域のほとんどが半島の先端に集中し、そこに至る陸路のほとんども土砂崩れ、地割れ、ひどい所は道路ごと崩落してしまい、ただでさえ通行可能なルートが限られるうえ、極めて細い。それが人命救助や避難さらには復旧復興をも困難にしている。

水陸両用のLCACや輸送艦で支援物資を移送

 今も能登半島には電気も水道も通わなくなった集落がいくつもある。生きるために絶対必要な真水に食糧そして暖をとるための燃料も、さらに地上ルートを啓開するための重機も届ける必要があるのである。しかも早急に。

 こんな時にこそ活躍が期待できる装備や人員がまさに不幸中の幸いにも我が国にはあるのである。それこそが滑走路を必要としない輸送ヘリであり、50トンの戦車まで揚陸させられる水陸両用のLCAC(エアークッション艇)やその母艦となる輸送艦である。

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©宮嶋茂樹

兵站を担う装備の重要性

 輸送艦3隻を保有する海上自衛隊だが、呉基地を母港とするその1隻である輸送艦「おおすみ」も震災発生直後にはその呉から駆けつけ、洋上基地となり、陸路が開いていない地域に空から海から支援物資を移送し続けていたが、この9日また金沢港に入港することになった。今回の入港目的はそこで国土交通省の緊急災害対策派遣隊の重機や車両を積み込み、出港後は輪島市沖合から孤立集落の鵠巣地区へ海から直接重機や車両を揚陸させるためである。翌10日15時から始まった重機積み込み作業だが、まあ手慣れたこと。

©宮嶋茂樹

 艦内の甲板には回転台が備わり、巨大な重機もやすやす方向転換でけるわ、鉄製の履帯(キャタピラ)履きの重機が「おおすみ」やLCACの甲板を傷つけないよう、ぶっといロープを敷き詰めるノウハウなんかもたいしたもんである。戦にも災害に対してもこういう兵站を担う装備やノウハウがいかに重要か。

 防衛省が公表しているLCACの最大積載量は50トン、陸上自衛隊最大の90式戦車も積め、最高時速90キロをたたきだし、しかも水陸両用である。それに普段から日本各地のビーチで陸上自衛隊の同じく履帯履きの装甲車やAAV7(水陸両用車)を揚陸させる訓練を続けていたのである。国交省の重機(油圧ショベル)と13両の土嚢を積載したトラックは2時間もかからず「おおすみ」に収納され、大波でゆれても艦体にぶつからんようきっちり縛着されるやこの日のうちに金沢港を出港していった。