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「おおすみ」を発艦して5分後、LCACは轟音とともに上陸を果たした。が仕事はこれからである。どうやってこのせまく急傾斜のビーチに橋頭保(海岸保)を築くんや。

白い布をひきつめて上陸ルートを確保

 LCACの前方扉が開け放たれ、クルーが両横の人員室からでてくるや、油圧ショベルの縛着を解いた。続いて油圧ショベルのオペレーターが乗り込むやカタカタと金属音をきしませながら上陸を果たした。鋼鉄の履帯を履く油圧ショベルは足元がずんと沈むビーチの砂をきっちり噛み、さらにバケットを振り回し始め、目の前のうず高く積みあがったというか崖ごと崩れて落ちてきた土砂を均しはじめ、さらにそのバケットをたたきつけ、乗用車1台がかろうじて通れるくらいの畦道レベルやがルートを啓開していく。

 油圧ショベルのアームには青いロゴの清水建設と国交省のステッカーがはられている。国交省に手配された清水建設の下請けか孫請けやろうがオペレーター、たいしたもんである。油圧ショベルが掻き分けたビーチに今度は「おおすみ」のクルーがやはりLCACから降ろした分厚いゴム板を次々としきつめ、さらにその上に後につづくトラックの走行ルートを示す白い布をしきつめては四角に杭を打ち込んでいく。

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©宮嶋茂樹

 上陸ルートは確保された。LCAC2101号機はそれを見届けるように再びガスタービンエンジンの高音とビーチの砂と波しぶきを同時にあげ離岸し母艦の「おおすみ」に帰っていった。続いてすぐに今度は土嚢を積み上げたトラック5両を積載したLCAC2102号機が上陸してきてはまるで地引網でひきつけられるように白い布をしき詰めた車両上陸ルート先端ギリギリにピタッと上陸した。

©宮嶋茂樹

13両の土嚢を積載したトラックが揚陸

「やるやないか」さっきまでは海風が唸り声を上げてただけのビーチは一気に活気を呈してきた。うなりを上げる重機、トラックを揚陸、誘導する「おおすみ」クルーの吹き鳴らすホイッスル。

 まるで1944年6月6日、フランスはノルマンディー地方のオマハビーチもかくやである。しかし今は戦ではなく能登の復旧復興のためにここに上陸してきたのである。次々にトラックは揚陸されるが、白い布の下に隠れたか細い通行ルートを踏み外す車両もある。そうなると深い砂にタイヤをとられ、スタックすることもあるが、そんなときも直ちに油圧ショベルが駆けつけトラックをその有り余るパワーで牽引していく。そして、さらに車両が次々に揚陸されていく。