2021年10月、当時19歳の男が甲府市の住宅で夫婦を殺害し、住宅に放火した罪などに問われている事件。死刑判決が言い渡された遠藤裕喜被告(21)が、東京高裁への控訴を取り下げた。これによって死刑判決が確定した。
当時19歳の少年は、なぜ理不尽な犯行に至ったのか。事件を報じた「文春オンライン」の記事を再公開する(初公開:2021年10月17日/遠藤被告の名前・年齢は公開当時のまま)。
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山梨県甲府市の住宅が全焼し、焼け跡から2人の遺体が見つかった事件。山梨県警は16日、遺体は同所に住む会社員、山川章弘さん(55、仮名)と妻でパートタイマーの靖子さん(50、仮名)だったと発表した。
10月12日の未明、山川さん宅から火の手が上がり、現場から男が逃走した。事件発生から9時間がたった12日夜、19歳の少年Aが、泣きながら「人を殺してしまった」と現場から30キロ離れた身延町内の駐在所に出頭した。全国紙社会部記者が明かす。
「県警は、山川さんの次女に怪我を負わせたとして、Aを傷害容疑で逮捕。その後、遺体で見つかった山川さん夫婦の死因は失血死だと明らかになりました。Aは1階の寝室で寝ていた夫婦を凶器で殺害した後に、建物に油を撒き、火をつけた可能性が高い。
Aは警察の取り調べに対し、『被害者家族の長女に好意を寄せていた』『急にLINEで連絡ができなくなり、殺害しようとした』などと逆恨みとも取れる供述をしているほか、事前に複数の刃物や揮発性の高い油を用意していたなどとも説明しているようです。『事件の数日前の夜中に山川さんの自宅を懐中電灯で照らす不審な人物を目撃した』という近隣住民の証言もあり、計画性を強く感じさせます」
県警は今後、殺人や現住建造物等放火容疑での立件も視野に捜査を進める方針だという。
Aは山川さんの長女と同じ定時制高校に通っていた
山川さん宅の近隣住民はこう述べて、がっくりと肩を落とした。
「幼い娘2人を連れて家の周りを散歩している両親の姿が印象に残っています。2人の娘は目元がぱっちりしていてね、私が『お父さんにそっくりですね』と声を掛けると、盛司さんは『そうですかね』と照れたように微笑んでいました。
少し前に朝、自転車で通学する長女の姿も見ました。愛嬌があって、すれ違う時に『おはようございます』と挨拶してくれた。どこにでもいる普通の家族だった。なぜこんなことになってしまったのか、残念でなりません」
あまりに身勝手な理由から山川さん一家の未来を根こそぎ奪ってしまったA。Aは山川さんの長女と同じ甲府市内の高校に通っていた。取材班は甲府市内で、かつてAと同じ高校に通っていた友人からこんな証言を得た。