実在の知里さんもそうですが、映画の中でテルは苛酷な運命を背負います。それでも、「ユーカラを文字で残す」ことを自分の使命ととらえ、受け入れる。そんな潔く強い生き方を選ぶテルは、同じ19歳とは思えない芯の強い大人の女性だと思っていました。
でも、知里さんの生まれ故郷である登別で「知里幸恵 銀のしずく記念館」を訪れた時に、知里さんが婚約者に宛てた手紙を読んで、「ちゃんと19歳の女性だったんだ」と、すごく親近感を抱いたんです。そうしたら、それまで遠かったテルが急に生身の人間として身近に思えて、共感できる部分が見えてきました。
民族楽器ムックリにも挑戦
──記念館には、手紙のほか日記も保管されていますよね。
そうなんです。それまでは知里さんについて研究資料やデータでしか読んだことがなかったので、とにかくすごい人、としか思っていなかったのですが、資料館で館長さんのお話を聞きながら彼女の書いた手紙や日記を読ませてもらったことで、等身大の彼女を感じられて、「テル」の中に落とし込むことができました。あれだけの貴重な資料を残してくださったご遺族の方にも感謝です。
──テルや知里さんのように、吉田さんも何かに挑戦したいお気持ちはありますか?
そうですね。今はいろんな役を経験してみたいというのが一番の大きな目標です。今回のテル役では、自分が知らなかったアイヌ民族の史実に触れるという貴重な経験をさせていただいたんですけど、実在した人物を演じるのも初めての経験だったので、そういう意味でも非常に大きなステップになりました。
もっといろんな役をやらせていただく中で自分の可能性を探りながら、役者として成長していければと思っています。
──今作では、ユーカラやアイヌの民族楽器であるムックリにも挑戦されました。歌やダンスをもっと本格的にやりたいという野望なども芽生えましたか?
野望なんてそんな大層なものではありませんが、最近は、歌とダンスと楽器を披露する盛りだくさんな舞台にも挑戦しました。残念ながらユーカラではなく、日本語の歌とダンスでしたが、歌で人に伝える楽しさはユーカラでも感じていたことなので、「これは極めたらきっと楽しいぞ」と思いました。だから、もしかしたら、もしかするかも(笑)。