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 やはり出発は定時より遅れたが、フライト終了後、山田さんが顛末をマネージャーに報告すると、マネージャーは、「先任の目で疑問を感じて、安全優先でドアの閉め直しを判断したのだから、ドアロックに異常がなくても、その判断はいいことでしたよ。ご苦労さま」と言ってくれた〉

 さらに、別のCAは離陸直前、客室内で異臭に気付いた乗客の言葉を知って、過去の訓練で学んだ異臭への対応策を思い出した。機長に速やかに報告し、空港のスポットに引き返すことができた事例を告白。訓練の重要性を改めて実感したという。

「こちらのドア、ダメです!」と

 1985年に御巣鷹山ジャンボ機墜落事故を経験したJAL。その後、社員への安全意識醸成のための取り組みは徹底されて、「『安全の層』は、しっかりと厚いものになってきている」と柳田氏は分析する。

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 実際、事故機に乗り合わせた乗客たちは、柳田氏の取材に対して、事故発生当時の機内について、次のように語っている。

「CAさんたちが乗客たちを落ち着かせる言葉かけにしても脱出指示にしても、テンション(意識レベル)を上げて叫ぶような感じで、しかもマニュアル通りにしっかりとやってくれたのは、混乱なく全員脱出をなし遂げるうえで大きかったと思います」

「振り返ってみると、僕らの席に近いところの(中央部の)ドアを、CAさんたちの判断で開けなかったのはすごいと思います。もし開けていたら、火が入ってきて大変な事態になっていたでしょう」

機体は8時間半燃え続けた ©時事通信社

 CAたちは、一刻を争う緊急事態発生時に、冷静に、主体的な判断で行動していたのだ。

 乗務員や乗客の証言を元に「奇跡」と報じられた脱出の裏側を徹底取材、分析した特別寄稿「JAL乗務員 緊迫の証言」は、「文藝春秋」2024年3月号(2月9日発売)及び、「文藝春秋 電子版」でも掲載されている。

文藝春秋

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JAL乗務員 緊迫の証言