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「500万円の人間もいたが…」特殊詐欺グループに入ったのに月30万円しか稼げなかった男の末路

『闇バイトで人生詰んだ。』より #1

2024/02/11

genre : ライフ, 社会

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「もしもし……住友第一信販の山本です。お世話になっております。ただいま、融資の実行許可を頂くために金融協会へ手続きしたところ、金融協会のほうから、融資実行許可が下りなかったんですよね。社長……参りました。御社の状況を考えると、この預託では担保として成立しない、そして返済能力がないのではないかと突っ込まれてしまって……。

 返済能力の確認として、先ほど預託頂いた毎月の返済金額の6か月分をもう一度弊社の銀行口座に入金して頂いて、その明細書をファックスで送付して頂けませんでしょうか。そうしましたら、協会のほうに弊社がすぐに確認をとりまして、融資実行許可を頂き、今回ご入金頂いた金額に関しては、融資金と一緒にご返金させて頂きますので、このお手続きだけなんとかお願いできますでしょうか」

 こう告げて男は電話を切った。

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「何かがおかしい」

 あれ何かがおかしい……。さっきまでタバコを吸っていたのに……。誰とも話などしていなかったのに。お金を要求している。どういうことだ……。金融の仕事? なんなんだ……。

 ここで初めて理解した。この仕事は企業に低金利、無担保でお金を融資するとファックスでDMを送り、融資の際に保証金を要求する「融資保証金詐欺」だったことに。

 ここでやめていればよかったものの、最初の段階で身分証明書のコピーを取られ、反社会的勢力の名称もチラホラ出され、下手に逃げられない……。紹介してくれた人の顔も潰せない。そう思った私は、このまま詐欺を続けることになる。

 その日から目の前で、毎日数百万円の現金を数える現場を見る。仕事(詐欺)が終わると豪華な食事やキャバクラに連れて行ってもらい高級シャンパンを開け、同い年くらいの綺麗な女の子との時間を楽しむようになった。

写真はイメージ ©getty

「仕事なにしてるの?」と女の子に聞かれると調子に乗った様子で「あ、俺? 不動産」と簡単に嘘をつくようになってしまう。給料日(報酬の支払日)には目の前でパンパンの現金が入った封筒が渡される。時間が経つにつれて、私はお金の魔力に憑りつかれてしまったが、最初の2か月間は仕事を覚えるまでの「研修」という形で私の報酬は20万円だった。

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