「心臓が飛び出るくらいバクバクしている。こんな緊張感は初めてだった。警察に窓をノックされたら人生が終了する」
特殊詐欺グループの一員として働いていた、若かりし頃のフナイム氏。犯罪に手を染めて以降、警察の存在に怯え続けていた過酷な状況とは……? フナイム氏による反省と警告の書『闇バイトで人生詰んだ。~元特殊詐欺主犯からの警告~』(かざひの文庫)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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警察に怯える生活
融資保証金詐欺を行っている間、警察に捕まるのではないか……そんな場面が多々あった。当時、詐欺の事務所は約2~3か月に一度必ず引っ越していた。
その時のエピソード。
お客さん(被害者)からお金がまだ取れると判断した時のこと。レンタカーを借り、名簿や顧客リスト、飛ばしの携帯電話、モバイルファックスを積み込み、高速道路を走らせながら詐欺をしていたことがある。
東名高速道路や常磐道をひたすら走り、詐欺の電話をかけていた。お客さんと話をしている時、車がトンネルに差し掛かるとどうしても電波が悪くなり通話が途切れてしまうことがある。お客さんからすれば、市外局番東京03の固定電話に通話しているのにどうして通話が切れてしまうのだろうと不審に思う。
このからくりは、転送電話サービスというものがあり、03から始まる電話番号を業者から借りて、その借りた電話番号を飛ばしの携帯電話(他人名義の電話機)に転送してもらえる仕組みになっている。私は電話が途切れた時に「すみません、電話の回線工事が入ってまして、本日電話が途切れ途切れになってしまうみたいです」とお客さんに伝えていた。
レンタカーを走らせている時、渋滞にはまり運転手がブレーキ操作を誤って、前の車に軽くぶつけて事故を起こしてしまったことがあった。ここで警察を呼ばれてしまったら……もし積んであるものが全て警察に見られてしまったら……現行犯で捕まる可能性もある。それを防ぐために、示談で話を終わらせ、「こんなにいいんですか? ありがとうございます」とお礼を言われ、何事もなく事故を処理したこともあった。
朝から晩までレンタカーの車内で詐欺を行い、夕方6時に各グループの車がとある公園の前に集合することになっていた時のこと。私のグループは30分程早く到着してしまった。