文春オンライン

世紀の一戦「猪木・アリ戦」が真剣勝負だったといえる理由 引き分けに終わり、世間からは「八百長」と批判されたが…

source : 提携メディア

genre : エンタメ, スポーツ

note

お金を払った客が文句を言うのは仕方がないけど、あの時、テレビ、新聞、雑誌で猪木さんのことをボロクソに言った有名人の名前、俺は今でもハッキリと覚えてるよ。あいつと、こいつと、こいつって。すでに2人ばかり死んでるけどね。

何もわかってねえヤツらが、「あんなの誰でもできる」とか言いやがってな。

あと、何も知らねえ有名人ならともかく、記者連中までボロクソに書きやがってな。

ADVERTISEMENT

俺は記者に言いたかったよ。「俺らが糞だったらお前らは糞バエじゃねえか!」って。糞にたかって食ってるわけだからな。何をくだらねえこと書いてるんだって。

「どっちかが勝ってたら死人が出てたよ」

試合の判定で、遠山(甲)さん(日本ボクシング協会公認レフェリー)が猪木さんに勝ちをつけたけど、プロレス側と思ってた遠藤(幸吉)さんがアリにつけたから、俺たち新日本のセコンドは遠藤さんに激怒したんだよ。

アリの有効打がジャブ1発だったのに対し、猪木さんのローキックはかなりのダメージを与えていたから、猪木さんの勝ちだと思ったんだよ。

ところがドローだったんで「なんでだよ?」と思ったら、遠藤さんだけがアリにつけてたっていうんだよな。

それで俺と(ドン)荒川さんで「遠藤を探せ!」って会場中を走り回ったよ。とっ捕まえて、ぶん殴ってやろうってね。

だけどあとで考えたら、あれはドローでよかったんだよな。もしどっちかが勝ってたら死人が出てたよ。

だってあっち側にはピストルを持った人間がいたとか言われているし、もしかしたらこっちにもいたかもしれない。だから、たぶん遠藤さんは自分が悪者になってドローにしちゃったんだろう。今になればその気持ちがわかるよ。

奴隷みたいな生活から這い上がってきた

この時の猪木さんの孤独は計り知れないよな。普段、自分の試合を「八百長」呼ばわりしてた連中の前で、堂々と真剣勝負で史上最強のボクサー、モハメド・アリと闘って引き分けてみせたのに、そのすごさが何ひとつ理解されなかったんだからな。

関連記事